冷えひえカヘル侯の巨石事件簿(三)アリニュマン/列石群で抱きしめて
門戸
プロローグ:永遠の恋は列石のあいだに
――なあ、憶えてるかい。
あれは夏の終わりだった。長く続いた
≪はじめの町≫を過ぎた頃だったよなぁ。いいや……この≪石坊≫の軍隊整列が、
お前は
俺のほうでもさ、そのくらいは想像ができたんだ。だからその
そしたらお前は、はっとした。警戒も緊張もずいっと横にやっちまって、ぐーっとまっすぐ俺の顔を見てきたんじゃないか。
≪まさか、あんたなのかい? ……≫
聞かれて呼ばれて、俺の方がびっくりだ! 何でこんな美人が、俺の名前を知ってんだよって。
お前は立ちどまった、
やわらかい薄明の中で、お前の瞳だけがはっきり青く光っていた。俺をまっすぐ見つめてるその瞳が。
今でもしっかり思い出せる、その時その瞬間のお前の姿。
お前の後ろには、ぼんやり淡黄色が揺れていた……。あれは
月の花をいっぱいに背にして、おどろいて……次に笑ったお前に、俺は恋したんだよ。永遠に。――――
「わたしも、憶えてる」
「……そうかい」
「これが本当の物語だったら、どんなに良かったか」
「何だよ、本当だよ。信じないのかい、かわいいお前」
男の口に、柔らかい布がかぶせられた。
「わたしがあなたに出会ったのは、春の朝だった。石坊たちの間にまじって、
「……」
「黄色かったのは
「……」
「
もが、……布の下でくぐもった声がうなっている。
「わたしの瞳は、あなたのと違って青くなんかない……見える? もう、見え……」
涙に濡れそぼった女の
「さようなら。……もどってきて、わたしの大切なあなた。たった一人の、……わたしの大好きな、あなた」
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