勇者
七歳になると、時の国王レオナルドに呼び出され勇者候補と認められた。村長が血相を変えて家に飛び込んで来るから、命の危機を感じで逃げ出しそうになったが。
村長と一緒に入ってきた洗練された美女は、エレノアという聖騎士だった。転生して初めて「……村を出て都市に行くのもありかも」と思わせてくれた美貌の持ち主。
「フェリックス、キミを勇者候補として聖騎士団に迎えたい」
突然のことで混乱したが、国王名義の誘いを断れるはずがない。村長も両親も「村の名誉だっ!」と大喜びだった。勇者候補を輩出した村は勇者候補が生きてる限り一切の税が免除されることを告げられると、村を挙げてのどんちゃん騒ぎとなる。
俺も生まれ育った村を離れるのは寂しかったが、もともと貧困にあえぐ村を救いたいと考えて頑張ってきたから、勇者候補となることを無邪気に喜んでいた。
聖騎士団に勇者候補として迎えられた俺は、ここで初めて“鑑定”されてユニークスキル“強奪”を持つことが公認された。この“強奪”スキルを最大限活用するため、聖騎士団も通常の訓練をすっとばして、ダンジョン潜りを主な訓練メニューとした。あまりに過酷で何度も死にかけたが、このおかげでスキルを大量に獲得し、実戦経験も十分に積むことができた。
十歳になる頃には俺は王国最強と噂されるようになる。ついには、史上最年少で勇者に任命された。この瞬間、前世の自分が抱えていた怨念にも似た後悔が少し消えていくのを感じていた。それほど勇者になるということのは、前世で子供の頃からファンタジー世界に憧れていた俺にとって、とても特別なことだった。
ただ勇者といっても、いきなり魔王城へ乗り込んで魔王を倒しに行くわけではない。上位の魔族相手に暗殺まがいの奇襲を繰り返して、魔王軍の戦力を削ることが任務だ。
かつて、初代勇者は前線の視察に来ていた魔王を討ち果たし一躍英雄となった。魔王軍は長きに渡る内紛状態に陥り、王国はその隙に支配領域を大幅に拡大することに成功した。この奇跡を再現するのが歴代勇者に課せられた使命だが、大抵の場合、敵中で孤立して上位の魔族に狩られるのが常だった。
俺は歴代勇者と違い、ダンジョンで実戦経験を嫌というほど積んでいる上に社会人としての経験もある。王国の都合の良い捨て石になるつもりなどさらさらなかった。
「俺を自由に戦わせてください。ダンジョンでともに死線を潜った仲間達と一緒なら必ず魔王軍に大打撃を与えてみせます」
のちに“勇者パーティー”と呼ばれる遊撃部隊の結成を認めさせた俺は、着実に勝てる相手を見つけては倒していった。なにせ勝ってスキルを“強奪”すればどんどん強くなるのだ。気がつけば魔王軍の一軍を壊滅させ、焦って釣り出された魔王軍七大将軍の一人を倒すことができた。
ここからの魔王軍の戦線の崩壊は早かった。二人目の七大将軍を倒すと、もう単独で俺より強い大将軍はいない。かといって、残りの大将軍が一箇所に集結すると戦線を支えきれない。
そもそも魔王軍は良くも悪くも統制が取れていない。最強の魔王には従っているが、大将軍同士は仲が悪いのが当たり前。結局、ろくに連携しないまま“勇者パーティー”に次々と討ち取られていった。
気がつけば、俺はわずか四年のうちに七大将軍すべてを倒していた。
「勇者フェリックスが七大将軍を全員倒したぞ!!」
この報せはたちまち王国全土を駆け巡り、王国民は俺を「初代勇者の再来!」と褒め讃えた。魔王の脅威が遠のいたことを祝うお祭りが全国各地で催され、前線に張り付いていた聖騎士団の騎士の多くが故郷へ凱旋を果たした。
俺も故郷の村へ喜び勇んで凱旋した。国王から褒美を大量に貰ったし、このまま村でのんびり過ごすのも悪くないなぁなんて思っていた。
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