少年の果て
灰都
第1話 少年の日々
日本は古くより3人の神様により、バランスを保っている。
神の名をアマテラス、ツクヨミ、スサノオという。
彼らはそれぞれ由緒ある一族と契約をすることで日本を守り続けていた。
―――とある豪邸の一室。
「おやすみなさい。お父さんお母さん。」
まだ5歳にもならないであろう少年が暖炉のそばでくつろいでいた両親にあいさつをして、部屋を出る。
寝室までは長い廊下を渡らなければならない。
長い廊下にはところどころ月明かりがさしている。
少年が窓の外を見ると、満月が輝いていた。
長い廊下を渡っていた最中、先ほどの部屋から叫び声が聞こえた。
少年が駆けつけると、そこには母だったものと、父を手に掛ける白いマントに身を包んだ男がいた。
男は少年を一瞥するとすぐに消えていった。
西暦2467年、8月2日。月の満ちた夜。
日本を守る三代一族の一角が堕ちた。
月の出ない曇り空。
蛾の集まる街灯の明かりだけが照らす夜に1つの銃声が響き、赤い血が舞い散る。
「ゆら、終わったか?」
隅で座り込んでいた中年の男が声を掛ける。
「たった今終わったとこだ。帰るぞラグナ。」
ゆらと呼ばれた少年が言葉を返す。
「あぁ。行こう。」
そう言って、ラグナと呼ばれた中年の男が歩き出した。そのあとからゆらもついていった。
山奥にある、とあるコンクリートビル。
「ただいま〜。今回はゆらがお手柄だったぞ〜。」
任務を終えたラグナとゆらが帰還した。
室内には、ラグナと同年代の新聞を読んでいる男とテレビを見ている20代後半の風貌をした女がいた。
新聞を読んでいた男、ハレイが手を止め、ラグナとゆらを迎える。
「ご苦労さん。ゆら、ラグナ。あ、ラグナ冷蔵庫の中にシュークリームあるから。お前と今週のムーンの墓の分な。」
「おっ!気が利くじゃないの。ありがとさん。」
テレビを観ていた女、ラウニも手を止め、帰宅組に言った。
「ねぇそれより血の匂いがすごいんだけど。疲れてるだろうし早く風呂入りな。」
ゆら、ラグナの2人は自分達が浴びた返り血を見るなり納得した表情で風呂場へと足を運んだ。
かつて、親を殺された少年、三日月ゆらは今、暗殺者として暮らしていた。
暗殺集団、「メルダー」の一員として。
メルダーは、ゆら、ラグナ、ハレイ、ラウニの他にもボスを含め残り2人の合計6人で成り立っている。
二人一組体制をとっていて、ラグナはゆらのいい兄貴分だった。
「ちゃんと頭も洗えよ??」
「わかっている。」
(……俺がゆらに色々言ってもこいつは片言しか話してくんないんだよな……。)
ゆらはメルダーの最年少である15歳だからラグナは何かとゆらのことを気にかけているのだ。
(しかし………)
ラグナが頭を洗っているゆらの体を見る。
至る所に見るに堪えない傷がある。
(15才が負う傷にしてはでかすぎるよな……。しかもそれをこいつは8年も、そしてこれから負うつもりなんだろうな。)
頭を洗い終わり、浴槽に入ったゆらが、自分の体を見ているラグナに気づいた。
「………どうした?」
「あ、いや滲みて痛そうだなって……」
「痛くないが…?」
「あぁそう……。」
(俺は元々面倒見がいいわけじゃねえのにな…。)
「上がる。」
そう言って、ゆらが浴槽を出た。
「上がったらちゃんと髪乾かせよ。」
「分かってる!!」
ゆらが即答する。
(やっぱあぁいうところはガキなんだよな〜。)
浴槽に入ったラグナはそう思うと、疲れたのかしばらく眠りについた。
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