第2話 お絵描きが得意なんです
待ちに待った登校日がやってきた。前回は、米粒と遅延のせいで何もかも上手く行っていなかったが今回は大丈夫だろう。
何せ電車が動いている、当たり前の事かも知れないがこんなに嬉しい事はない。
改札から急いでホームへ降りる、電車はもう来ている。カバを持ち上げながら電車に駆け込んだ。
ギリギリセーフだった、荒くなった息を整えてイスに腰掛けた。
「ギリギリだね」
ドキッとした、美しい声と花のような良い香りだった。俺は、動揺を悟られないようにゆっくりと横を向いた。
「おはよう、奏悟くん」
俺は思わずあっと言わんばかりに答えた。
「おおはようございます!!しのんさん!」
不味い、、思わず下の名前で呼んでしまった。
これはキモいかも知れないと恐る恐るしのんさんの顔を見た。
すると、彼女は耳に髪をかけながら答えた。
「奏悟くんって、意外と積極的なんだね、、」
これは何と言うかあれだ、罪な人だ。こんな事を言われてしまったら男なら勘違いしてしまう。
俺はドキドキしながら無難に答えを返した。
「そそうすかね、ハハ、、ハ」
俺が愛想笑いにも近い笑を浮かべていると彼女は、ヒョイっと顔を近づけてきた。
近い、、俺のことをじっと見ている。何だこれは、恋が始まる予感がした。彼女は、リップを塗ったであろう唇をぷるんっと開いてこう言った。
「今日はご飯粒ついてないね」
にっこりと微笑みながら俺のほっぺに軽くタッチした。心臓がどうにかなりそうだった。
「しのんさん、、、!その照れるのでやめてください」
それは、そうだ昨日あったばかりの女の子にほっぺを触れるなんて天変地異が起こったのかと思ってしまう。
俺が頬を赤ながら下を向いていると彼女は、微笑みながら言った。
「ごめんね、ちょっと意地悪したかったの」
意地悪だなんて、ご褒美の間違いじゃないのか?
そうだこれは、チャンスだ。連絡先を交換できるんじゃないのか!?
勇気を出して、心を沈めて彼女に問いかけようとした時だった。
「しのんー!おっはよ〜」
明るく元気な声がした。褐色でベリーショートの女の子が手を振りながらこちらに近いて来ている。しのんさんは、小さく手を振りかえしていた。
陸上部だろうか、スタイルがとても良い人だった右目の下のほくろが何ともいえない味を醸し出している。
元気そうな彼女は、俺の方を見て言った。
「しのんー?彼氏?」
彼氏なんておこがましいなんて俺が思っていると
「そうだよ」
しのんさんは、さらっと答えた。俺と彼女が驚いているとしのんさんは、クスクスと笑いながら続けてこう言った。
「冗談だよ、さとみ」
ふぅっと一息ついてしまった。と言うか何だろうちょっと悲しいような気もする。
やれやれと言わんばかりに、さとみさんが自己紹介してくれた。
「私は、石野さとみっていいます!運動が好きで山登ったり筋トレが趣味だよ!」
ほぁ何と女性で筋トレが趣味って人初めて聞いたかも知れない。しのんさんとは、違う意味で良い体をしている、尊敬的な意味で。
おっと俺も自己紹介しておこう。
「僕は、吉川奏悟っていいます。まだ初日ですがよろしくお願いします。石野先輩」
決まった!これが挨拶だ。我ながら素晴らしい!
出来る後輩感が出た!
「奏悟くんね、、、そごっちって呼ぶね!よろしく!」
石野さんは、ニコッと笑い軽く会釈した。
本当に元気な人だな、それにしてもあだ名が出来るのも悪くない気分だ。でも何だろう、、あだ名って何だか、、嫌な感じもする。
少し考え込んでいると、しのんさんが嬉しそうに言った。
「いいね!そごっち!」
二人は嬉しそうにキャッキャっと盛り上がっている。まぁ良いか考えるのもめんどくさい、今はこの空気を沢山吸っておこう。
電車のアナウンスが静かに響く。
そうこうしているうちに着いたようだ。
電車を降りて徒歩5分ほどのところに俺の新しい学校がある。緊張しているのだと思う、少し目つきの悪くなった俺を二人が手を引いてくれた。
俺は、されるがままに誘導されていく。学校の門を潜って靴を履き替える。
階段前に差し掛かると二人は、一年生の教室は3階だから気をつけてねと見送ってくれた。
二人に軽く挨拶をして、教室に向かう。
確か3組だった、ゆっくりと教室は向かう。
教室までの道中女の子しか見ていない、と言うか男を見ていない。ドキドキしながら自分のクラスと扉を開けた。
まさに女子女子女子だった、正直面を食らったが少し勇気を出して黒板に書いてある席順の通りのところへ座った。
チャイムが鳴り先生が入ってきた。
安心した男の人だ、少し年季の入ったメガネを光らせた中年のおっさんと言った感じだ。
先生が号令をとる。
「はい、新入生の皆さんまずは、入学おめでとう」
何ともありきたりな挨拶だ。少しの沈黙の後に続けてこう言った。
「この学校にしては、珍しく男の子が入ってきたので皆んな仲良くしてくだいね」
あぁこの担任は、ハズレかも知れない。自分も男のくせにこ言うことを言うのか、第一印象は最悪だ。
一限目は、軽い挨拶や学校のルールなどの説明で終わった。
一限目終わり休みが時間やってきた。ドキドキしながら過ごしているとギャル3人組が絡んできた。ただならぬ空気だ。
すると、真ん中のロングヘアーのギャルが口を開いた。
「お前、男一人じゃん。狙ってきたの?キモいね」
辛辣な言葉をいただいた。どう返そうか迷っていると周りの子達もザワザワしている。
空気悪いよなって思いながら、ある事を思いついた。
俺は、カバンを持ってトイレへ走って行った。このカバンの中には秘密兵器がはいっている、俺はトイレで高速で作業を始めた。
休み時間をめいいっぱい使って授業が始まる頃にダッシュで教室へ戻った。
ギャル3人組は、戻ってきたと言わんばかりにチラッと俺の方を睨んだ、その瞬間ギャル3人組含めてクラス中が湧き上がった。
「誰?あの子、めっちゃ可愛いじゃん」
そう、秘密兵器というのは化粧だ。
メンズメイクの勉強をしていた時に女装にハマった、その時に身につけた奥義だ。
担任は、目を丸くしてこう言った。
「んん、、とりあえず職員室にきなさい」
それからは、散々だった。校則的には、化粧はおっけいだが変な趣味はないかとか、その辺デリケートなのかとか色々と聞かれた。
面白いかなと思ってって答えたら鬼ほど怒られたのでそいう事にしておいた。
午前中授業は、職員室で過ごす羽目になった。
下校時間になったからと昼過ぎに教室へ戻ると、
さっきのギャル3人組がこちらへズカズカと寄ってきた。
水でもかけられるのかと思っていたが、反応は予想外で凄い勢いで謝られた。
リーダー格であろうロングの子が頭を下げていた。
俺は、おどおどとしながら丁寧に返した。
「いや!俺も仲良くなりたくて面白いかなって思ってやっただけだから、、、!」
3人組は、きょとんとしていたが次の瞬間には爆笑していた。3人が声を揃えてこう言った。
「めっちゃ面白いじゃん!それにめちゃくちゃ上手かったし!もしよかったら私らにも教えて!」
俺は軽くおっけいの返事をした。担任に早く帰るように言われたのでその場で別れた。
散々な一日だったが、まぁ最悪の自体は逃れたと思う。滑り出しは上々だ、気分が乗ったのでメイクは落とさずに帰った。
明日から楽しい学校生活を送れるといいな。
ヤリオ2号くん にんじんペン @Dobepp3
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