02.すみれの砂糖漬け
甘いものが好きだ。
辛いものも好きだし、とにかく食べることが好き。
「よく食べるね」と言われることがとても多い。
ちなみに私のことを好きな人は、私の食べる姿を見て「おいしそうに食べるね」と言ってくる。これは他の人でも当てはまるかは不明だが、それを伝えてくる=好意を持っているはほぼほぼ確定だった。
私のことを好きな人に「私のどこが好きか」と聞くと、決まって「おいしそうに食べ物を食べている姿」と言われる。好き勝手に食べているだけなのに、と思う反面、好きな人との食事というのは自分が思っている以上に幸福感が増し増しなのかもしれない。
さて。
食べることが好きで、好きなものはいくらでも食べたい!という欲求に塗れている筆者だが、食べ物の中で特別な思い入れがある物がいくつかある。
その中のひとつに『すみれの砂糖漬け』が挙げられる。
これは、特においしかったとかそういうのではなく、でも思い出が詰まっているものだ。貰い物だった。ちょっとした縁で、私自身とすみれという花が重なるようなイメージになったことがあり、当初自分をとても良くしてくれていた方が「あなたに」と
贈ってくれたのが『すみれの砂糖漬け』だった。
小振りでかわいらしい缶に入っていたのを覚えている。
手のひらにおさまるサイズのソレを受け取って、なんだかくすぐったいような気分になった。
缶を開けると彩度が少し落ちた、でもしっかりと色づいたすみれたちがぎっしり入っていて、口に入れると強烈な甘さと花の香りがめいっぱいに広がった。
これは紅茶とかといっしょに食べたほうがいい、と感じ、すぐさまミルクティーを用意して楽しんだ記憶がある。
あの缶はどこにいってしまったんだっけ………
自分のことを考えてわざわざ取り寄せてくれたと教えられた『すみれの砂糖漬け』。
あんなに可愛いものに自分を重ねてくれて、そしてプレゼントしようとしてもらえたことは、今もこうして私の記憶の一部となって生きている。
何かを見て自分と重ねてもらえるのは嬉しいことだ。
そんなことが、また繰り返されるように、と自分を改めて見つめ直そうかななんて考えて私は今日もミルクティーを口にするのである。
かつて猫になりたかった私へ @ko_cha
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。かつて猫になりたかった私への最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます