序章
第1話 思惑に乗った者①
高校に通いはするものの毎日変わらぬ日々。
無駄に長い通学路を自転車で走り、バカ騒ぎする同級生と同じ教室に向かう。
呼び出しや説教は面倒なので授業には出るがまともに聞くつもりはなく、今やっているゲームについて考える。
そんな日々を過ごしている中それは静かに起こった。
ある朝テレビを見ていると他国と行き来する方法が途絶えたという。
ネットなどの通信はつながっているのに船や飛行機で行き来しようとするとワープしたかのように進む方向が反転するらしい。
すごく大変なことが起こっているのだろうが海外に行くこともない愁似は他人事にしか思ってなかった。
しかし1週間ほど経つと日常に如実に影響が出始めた。
食料の高騰、人々の失業によるホームレスの増加など目に見えた問題が起こり始めたのだ。
その頃になると一気に治安も悪化し、学校も週の半分が休校になった。
食料も配給制の可能性が出てきて身をもって事の重大さに気づいた。
さらに1週間ほど経つとSNSと中心に謎の扉が現れたこと話題になる。
音もなく突然現れた扉を怖がる人も多かった。
扉に入ったらダンジョンだったなどと吹聴するものもいたが、妄想だと一蹴されていた・・・が実際に中に何かしらの空間が繋がっていたらしく本物ではという人達もいた。
学校に行った際もこの扉の話と日本隔離の話であふれていた。
ただ数日もすると政府によって対処がされていった。
3日後の自衛隊投入も決まったらしく愁似は過剰だろと思いつつも扉の先についても退屈を消し飛ばすのではないかと気になってもいたのでその日を少し心待ちにしていた。
自衛隊突入当日、愁似は東京駅前の扉を中継しているテレビを見ていた。
突入した自衛隊を見送って数時間後、自衛隊が出てきたと思ったらどう見ても入っていった時よりボロボロになっていた。
隊員の雰囲気はもちろん装備なども傷ついており、挙句には人数が大幅に少なくなっていた。
政府からは安全性が確保しきれていなかったことなどについての謝罪会見があったが緊急時であることもあり強権を使っていることに野党が騒ぐことは無かった。
次の日になると生き残った隊員のインタビューが公表され、中には未知の生物がたくさんいたことが明かされた。
同時に未知の生物には銃火器が利かなかったこと、そいつらはいわゆるファンタジーに出てくる怪物のような見た目をしていたことを知った。
このことで世間では完全にゲームでよく見るダンジョンとモンスターだろうと結論付けた。
政府はそれに同調するように
それからはまた変わらぬ日々に戻っていった。
封鎖前までとはいかないがそれなりに退屈な日々だ。
ダンジョンによって変わることは無かったのだ。
変わらないと思っていた封鎖で大きく変わり、変わると思っていたダンジョンで全く変わることは無かった。
愁似はやはり人生簡単に予測できるものではないなと思いつつ、今日もまた学校に行く支度をした。
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自衛隊の敗走から一ヵ月と少し経った頃、愁似はいつもと同じように教室に向かっていた。
しかしみんなの雰囲気が普段よりも浮ついているようだった。
教室で席に着くといつものようにすぐ隣の友達が話しかけてきた。
「シュウジくんおはよ」
「あぁ、
彼女は崎嶺
「シュウジくんは見かけた?」
「ん?なにを?」
「モンスターだよ。別のクラスの子たちで見たって子が何人かいたからさ」
「それって街中にいたってこと?」
「そうそう、そうなんだよー。少し怖いんだよねー」
「それは怖いねー。あれ?もしかしたらこのまま帰れるかもじゃね!」
「それはそれでどうなんだろ。外歩くのも危ないと思うんだけどなぁ」
「それもそうか。でもそんな数が多くなさそうだし大丈夫なんじゃないかな?」
「どうなんだろうね?別にみかけただけで人を襲ってるって話も聞かないからね」
「もしかしたら見掛け倒しなだけかもな」
そんな話をしていたら先生が教室に入ってきた。
「おう。お前ら静かにして座れ。今からこの後の指示出すからな」
先生が言うとHRの鐘が鳴った。
たしかに先生がHRの鐘の前に来ることも珍しいのでいつもとは違うらしい。
「みんなも知っての通り、街中でモンスターの徘徊が確認された。今のところ人を襲ったとの情報は出ていないが安全を期すため休校にすることが決定した。今はまだ暴れてないがもし暴れだしたとき、学校では対処できないので責任負いませんってことだな。混乱を避けるために一斉に全生徒バイバイではなくクラスごとタイミングをずらして下校することになる。だからお前らはここでいったん待機だ。新しい情報や指示があるかもしれないからあまり騒がず静かに待ってろよ。以上だ。
俺はまた職員室に戻って会議の続きだから放送の指示に従ってくれ。下校するタイミングには俺もまた来る」
そう言い残すと先生はすぐに教室を出て行ってしまった。
ほどなくして愁似のクラスにも下校の指示が出た。
「シュウジくんまたね」
「サキミネさんもまたね。モンスターには気をつけて帰ってね」
「分かってるよ。シュウジくんも気を付けてね」
そういうと愁似と紫苑はいつものようにそれぞれの帰路に着いた。
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