明日晴れるかな

藤間詩織

第1話 大学3年の春

「塔子はいい子すぎてつまんないんだよ。俺はもっと高尚な女が好きなんだ」


塔子は大学3年の春に2年間付き合った和哉に振られた。

塔子は和哉の好きな音楽は聴いたし、和哉の好む服装や髪形もしてきた。

和哉が中森明菜が好きだというから、塔子は松田聖子が好きだったけれども、一生懸命明菜の歌を覚えた。

塔子と和哉が付き合う前に和哉がアタックして振られた真由美という和哉と同じ経済学部の頭のいい真由美の真似をして、一生懸命、本も読んだ。

和哉のためならばたくさん努力した。

でも、和哉の心には届かなかった。


高尚な女が好きなんだ。


和哉のこの言葉は、それ以降の塔子の人生にトラウマとして心に残った。

大学卒業して、メーカーに一般職で就職した塔子は、昼は会社のOL、夜は仏文科だった塔子は日仏学院に通って、フランス語の勉強に励んだ。


塔子が26歳の時、風の噂でストレートで司法試験に合格した順子という女性と和哉は結婚したと聞いた。


わたしには特技もない。

器量もよくない。

性格も地味だ。

和哉以来、彼氏ができないまま26歳になっていた。

このままわたしは一人で生きていくのだろうか。

田舎に帰って、お見合いでもしようか。

東京は疲れた。

みんなすごい人ばかりが当たり前のようにたくさんいて、塔子は自分を見失いながら東京の街をさまよい続けてきた。

もう、田舎に帰ろう。


塔子は埼玉県の久喜市にある農家を営む実家に帰ることにした。

東京の人は歩く足が速い。

塔子にはもうその足についていけなかった。

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