ラストライ
ホノスズメ
序章 必然者
「まだ大丈夫」
冷えきった十二月のスクランブル交差点、周りの人は堰を切って動き出すのにわたしは立ち止ったままだった。電光掲示板には、AIの成長に伴う電力問題がとりあげられていた。マフラーをまき直して歩みだす。
どこかしこもまぶしいほどに照り、夜を知らんばかりに騒ぐ連中もいる。
ああ、すべて過剰だ。
ブランド物の服も、靴も、顔でさえ忌々しく思う。思ったところでいつも通り、心の棚へ折りたたまれて終いになる。そういう心が憎らしかった。
ビル街を抜けてしばらく、マンションの一室についた。
「あら詩織、遅かったわね。また図書館?」
「うん、まあ」
使い込んだマフラーをバッグに詰込み、冷蔵庫を開けて緑茶を注ぐ。
冷えた体に、キンキンの茶はずんときた。
「っぷはあ」
「体に悪いっていつもいってるじゃない」
渋い声音さえ、空々しいものと思えた。軽くうなずく。コップはシンクに放置して自室にこもった。
高一ももうすぐ終わり。これといって勉学に気を急くようなこともなく、机に立ち上げるのはもっぱらパソコン。フォルダをクリックすると、スクロールも億劫になる論考の題名が並んでいる。
どこに出すわけでもなく、見えた必然に備えてしまう性が、こうして駆り立ててきた。
ほおずえをついて嘆息する。年の瀬ということで気が緩んでるのかもしれない。
「死蔵するしかないのかな……」
扱うのは一分野におさまらない。それだけでどこの大学も研究機関も受け取ってくれない。返信すらないというのだから、考えものだ。
結果的にとはいえ、三年でちまちま積み上げてきたものは、自分でも体系と呼べるほどの完結性をもってしまった。
フォルダ名は整合学。呼び名に困ったとき、AIにつけてもらった名だがなかなか気に入ってる。
「整合学……ふふ」
使われない理論体系とは、なんともったいないことか。
自嘲して今日の作業に取り掛かる。
「さあ、やっと運用理論にかかれるぞお!」
ホワイトクリスマス夜半、わたしこと相原詩織は第二アプローチに入った。
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