第2話

屋台舟が橋の下を通る。それを酒の肴にしながら川のほとりで飲む。今日は少し曇っているけれど、風は心地よく涼しく吹いている。珍しく、快適だ。


カップルがずらっと横に並んでいるのを横目に何も思わないわけではないが、一人で飲むのもまた快い時間であると思う。買ったのが少し前だったからぬるくなってしまった酒が喉を通る。腹に入ってアルコールが揮発して酔いが回るのを身体で感じられる。


一人が好きってわけでもないが、特段嫌いではない。ただこのような場での1人飲みは1人でない時を思い出して寂しくなるだけだ。


橋を渡る観光客の姿を肴に飲む。あらゆる景色がなぜ観光に適した地であることを伝え、住むには不適切であることを喧騒が伝える。 


ん、今日は晴れの予報ではなかったか。頬に伝う雫に思う。


京の小雨より。

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京の小雨より むかではみ @honedachi

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