差し伸べる手

ずっと布団の中で声を殺して泣いていた。


それは毎日続いた。


気づけば12時を過ぎている。

日付が変わって、今日も学校に行かなければ、と圧迫される。それでも寝られない。もう最近はずっと寝不足だ。


 その日々が続いて、生きているのさえ辛くなっていった。それから私は左手首に傷をつくるようになった。死んでしまえと思った。死んでしまおうと思った。こんな手首の傷で死ねるはずもないのに、ずっと切り続けた。滴り落ちる真っ赤な血が私の生きている証拠だった。痛かったけれど、慣れていくうちに痛みを感じなくなっていった。その度に傷は深くなっていく。

それでも良かった。


 ネットでは「そんなの一瞬の快楽だからやめた方がいい。傷跡は一生」なんて言う人が多い。けれど私はそれが良かった。一瞬でも快楽を感じられるのならば、それで苦しさが飛んでいくのならば。でも、苦しさは飛んでくれなかった。その時気づいた。誰かにこの苦しさを認めてもらいたい。その人に辛かったね、と言ってそばにいて欲しかっただけだったことに。助けてなんて言えない。だってこんなこと言わなくちゃいけない私がとても醜いから。恥ずかしいから。誰にも言えないなんて私は孤独だ、と身をもって実感する。そして今日も私はその4文字を言えず、傷も癒えずに、下を向いて、人に笑われている。


 それでも手首の傷跡を右手で撫でながら、大丈夫だと思い込む。そのまま深く息をする。誰にも言えないこの言葉は今日も口に出せず、心の中でこだまする。


        たすけて

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