第12話「涙乗の紙片」

淡い切なさを

消すように生き急ぐけど

底にあるのは闇だけ


この先足掻いても

光の見えない闇で

どこへ

迎えばいいだろう


そんな短気と

ひどく重苦しい心だけが

絶えず交差する


乾いた命だ

かみ砕かれた命だ

だから消えたい


もう誰も居ない程

この未来に光はない


それほど修羅をくぐって

それほど矛盾の方角で


絶えた自分で

顔を上げる


もうこれってただの

自由のない人生じゃないですか


生きてるなんて言えやしない

ありさまじゃないですか


もう消えたほうが

自由になれるじゃないですか


もう終わろう

もう終わろう


それくらい望んでも

それを果てせぬ世界ですよね


ずるいです


生きてまで涙を流すことが

正しいなんて


苦しみに比例して生きにくくなるのに

これはなんていう報いですか

この晴れた空は

なぜここまできれいに透き通っているのですか


ほんとに、

こんな日々のぬくもりに

生かされるから


悲しいんです


とても悲しいんですよ


それでもやはり明日の天気が

気になって


誰かが生きる今日に

また私も居ようと思えるのです


なんて、世界は、儚くも、絶えないものなのでしょう


あぁ、やはり生きて

やはり、生きることのほうが遥かに悩めて

遥かに、大切にしてるのだ

そう、自分が輝いて見えました


だから、生きます

生きて生きて、涙の後も、また生きます。


ああ、きれいだ。

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