第5話 第一村人発見
モンスターとの戦闘後に見えた、小さな集落に喜一は向かう。血だらけのモンスターを引きずって。
その集落は古びた小屋が数軒あり、閑散としていた。村人達の声や物音も聞こえない。
喜一:「すいませ〜ん、どなたかいらっしゃいますか?」
小屋の窓の隙間から村人らしき目線を感じる、こちらを観察しているのか怯えているのか、不審がっているのか出ては来ない。
喜一は先程倒した、血だらけのモンスターを引きずっているから当然であろう。
喜一は、近くの木々を集め殺した人間から奪ったマッチで火をおこす。集落のど真ん中で。
モンスターをテレビで見た料理番組の様に適当に見様見真似で切る。
火に投げ入れる。もうめちゃくちゃだ。
しかし、モンスターの肉が焼ける香りは、この世界へ来てから何も口にしていなかった喜一にとっては香ばしく、食欲を、そそった。
集落にも煙と香りが広がる。
締め切られた小屋の中にいた、村人達が扉を開けこちらを見ていた。
見た目は、やせ細り小枝の様な腕と足。今にも倒れそうな村人達だった。
喜一:「あぁ!美味しい!!!調味料も何もないが、このイノシシの様なモンスターは美味しいなぁ〜、、」
彼はあえて大声で、集落に響き渡る様に独り声を出す。
背後から近づく人間がいる。察知能力ですでに喜一は理解している。小さな子供だ。
パッと振り返り、喜一は子供を見る。
喜一:「ほいよ!これやるから食べてみな」
小さな子供は、あばら骨がくっきりと分かる程に痩せ、肌も衣服もボロボロ。
子供の父親らしき男が走り寄って来た。
男:「やめろ!どこの誰かも分からない奴から、受け取る必要なんてない!」
子供は、怒られようが何をされようが、貪り食っていた。
喜一:「おい、あんた。俺がどうしようと、そいつに何を渡そうと俺の自由だ、文句があるなら俺に言え、というか俺の前に立つなら名前くらい名乗れ」
男:「名前?そんなのこの集落全員誰にもあるわけが無いだろ、名前が貰えるのは、お偉い貴族様達やギルドに所属した兵士達、そんな事も知らないのか?」
喜一は、唖然とした。名前が無い?産まれたら名前をつけられ愛情を注がれ育って行くものではないのか?この世界では、名前すらも与えられず生きる人間達がいるとは、思い返せば殺した男達も、特に名前で呼びあってはいなかった。
集落のど真ん中で火を起こし煙を立ち昇らせたせいか、馬に乗った男達が集落へと走ってくるのを喜一は察知した。
喜一の目の前に3人の馬に乗った身なりも整った男達が来た。
男:「我が名は、レジィ!第四騎兵隊、索敵部隊所属、、、」
喜一:「長い!長い!長い!うるさい、し、べらべら食事中に俺を見下しながら話すな、唾が飛んで来たらどうすんだ?」
レジィ:「貴様!!侮辱するとは良い度胸だ、小汚い防具になんだその剣も、盗賊風情が大口を叩くもんだな」
喜一は、先の戦闘で会得したスキル、猪突猛進を発動!
体勢は座った状態から体勢低く一気に3頭の馬の足を全て切断する。
3人の、男達は馬と共に崩れ落ちる。
一人は馬の胴体で足を挟まれ、一人は馬から落ちた衝撃で頭を打ちつけ、転がりまわる。
喜一:「レジィ〜♬レジィ〜♬レジィ〜!!俺が何だって?さっきみたいに何とか言えよ」
レジィは馬から落ちても片膝をついて持ち堪えていた。しかし、先程馬から見下していたはずが、喜一がレジィを見下す。
レジィの片膝をそのまま膝から地面までナイトソードで突き刺す。
レジィ:「がぁ〜、くっ、貴様、我が誰だか、」
喜一はレジィの右頬を殴る。ナイトソードが地面まで刺さっている為、殴る度に片膝も血を流す。
喜一:「よいしょぉ!よいしょぉ!」
右頬、左頬、左右から殴り続ける。
レジィの顔面は腫れ上がり赤く染まる。
喜一:「スキル、憤怒発動!」
ここまで、殴り続けたレジィの顔面を右拳を思い切り振り切る!
レジィの顎が顔から、ちぎれ飛ぶ。
レジィ:「あう、、あぁ、あうわ、、、」
声にならない声で話せず叫ぶ気力もなく、倒れる事も出来ず。レジィはそのまま息を引き取る。
その光景はもはや、見るに堪えない。
悲惨で汚らわしく無惨。
集落の村人達も気がつけばまた小屋へ隠れていた。
喜一:「あとは、2人か!すまんね〜、なんの恨みもないけど、とりあえずさレジィの元へ一緒に逝かせてあげるよ」
ただ、集落で食事をしていた喜一。
そこに現れた3人。そして、ためらうこと無く躊躇する事無く、平気で殺人を繰り返す。
AI:「レベルアップ 職業獲得 殺戮者 スキル獲得 強奪 スキル獲得 金剛腕力」
喜一:「良いね、良いね!レベルアップやスキル獲得、今で幾つあるんだよ。戦闘時にスキル組み立てて優位になるようにまた考える必要あるな、、」
ほとぼりが冷めた頃、先程の子供が声をかけて来た。
子供:「あの、なんで殺しちゃたの?お話ししたりしてお友達になったり一緒に遊んだり、そのご飯一緒になんで食べなかったの?」
喜一は何も言わなかった。返す言葉が喜一には思いつかなかったし、小さな子供の純粋な疑問へ嘘もつきたくも無かった。
喜一は、振り返ることもなく殺した3人の武器や防具使えそうな物など一切見ずにそのまま歩き出した。
集落から離れ気がつくと森の中にいた、木漏れ日から差し込む太陽の日差しが喜一を照らす。
彼は異世界転生してからやりたい放題やり、現実世界では考えもしなかった殺人やモンスターとの戦闘。
喜一は木に寄りかかり、そのまま座り込んだ。
血みどろの衣服や、血に染まった手。
今になって、喜一は人を殺してしまった事実を突き付けられた。殺した男たちの死にゆく様や、眼差し、拳から伝わった人間の肉や骨の感触。
喜一:「異世界転生、、アニメと全然違うだろ、いつ俺はこんな、転生して舞い上がってたから人間を平気で殺して喜んでたのか、考えもせず好き放題行動して、、」
彼は嘔吐し、木に頭を打ちつけ現実を受け止めようとせず逃げ出そうと、あの暗い部屋で引きこもっていた空間が今では戻りたいとまで彼を追い込んだ。
貴方はどう感じていますか?彼は正しい?間違えている?転生したなら当然の事?
貴方の日常はごく普通の当たり前の日常を過ごしていますか?
喜一がようやく正気を取り戻す。眩しい程の太陽の光が心地よかった。
彼はもがき苦しみながらも前へ進む。
答えがあるかも分からない先の見えない異世界ライフで、ただのんびりと異世界ライフを過ごす事も出来たかもしれない、人を殺める事も、自分を責める事もなく楽しく過ごす日々があったのかもしれない、だがこの世界は彼をそうさせてくれない。
現実でも戦争が起き、関知しない所で殺人が起きているであろう。
この異世界でも同様に、、、、
異世界に行きたい!行きたい!だだをこねる、引きこもりニートがまさかの異世界転生 ようた @yota4001
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