後日談 その後

 すばるはその後、両親とも涙の再開を果たした。

 俺はコウのあの家を正式に買い取って、すばると二人の生活を始め。

 何もかもが新鮮で、光に満ちていて。

 この手にすばるが帰って来た事が、今だに信じられずにいた。

 それをそのまま、すばるに伝える。

「だって、死んだって思ってたんだから」

「それは…ごめん」

 すばるはベッドの上、俺の腕の中で小さく縮こまる様にして見せた。

 細く引き締まった身体は、すっかり日焼けしている。すばるを助けた『じいちゃん』を手伝って、ずっと漁船で海に出ていたと言う。

「すばる。潮の香りがする…」

 くんと鼻先をその首筋へ埋め、匂いを吸い込む。

「くすぐったいっ。なんか、犬みたいだって」

「いいだろ? 全部、ちゃんと覚えとかないと…」

「それに、俺シャワー浴びてるから潮の香りなんて──」

「するんだ。海、抱いてるみたい…」

「んだよ。それ」

 照れたすばるの声。ぎゅっと抱きしめ、キスを落とした。

 耳や耳の後ろ、首筋に鎖骨。

 順々に辿って行く。既に一度ならず事は済んでいたのだが、一旦、始まると止められなくなる。

 紅い痕が散るそこかしこに、当分水着だけにはなれないだろうな? と思った。

「な。もう、一回。…いい?」

「いいよ。何度だって」

 照れ臭そうに笑うすばるに、ドキンと胸が高鳴る。

 因みにまだ朝の十時過ぎ。

 朝食だって食べてない。今日はもう、このまま、ダラダラとすばるとベッドで過ごすのだと思う。

 

 なんて、幸せな時間だろう。


 すばるの了解を得た俺は、またその身体に、熱に溺れて行く。

 一つ、一つ。その反応を確かめながら、胸に刻んで行った。


 俺だけの、すばる。

 


 ―了―

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