函館宝来プロジェクト02「海霧と伝説の看護師」
函館のベイエリア、ここは宝来町なのか豊川町なのか。
たこ焼き屋「海霧」は、その名の通り、霧に包まれたようにひっそりと佇んでいて、スマホの地図情報を頼りにたどり着くことができない。
夏海に導かれ、気が付くと目の前にその入り口はあった。
「海霧」の店内はこじんまりとしていて、テーブル席も申し訳程度にはあるが、カウンターがメイン。
夏海がいなければ、一見の私がお店に入れたかどうかはあやしいところ。
色々と聞こえてくる話を夏海さんに逐一翻訳してもらう。
海霧に通う常連客の女性には、人外の者を治療するという「死霊郭病院」の伝説の看護師がいた。
彼女は何か事情あって今は看護師をやめているが、お世話になった人外の者が彼女を慕い、たこ焼き屋に会いに集うという。
海霧と伝説の看護師
たこ焼き屋「海霧」には、毎日のように通う謎めいた常連客がいます。彼女の名前は遠野美咲(とおの みさき)。落ち着いた佇まいで、常にどこか哀愁を漂わせる彼女は、地元の人から「人助けの天才」と噂されています。しかし、彼女の本当の過去を知る人はほとんどいません。
伝説の看護師「死霊郭病院」の噂
美咲が看護師だった頃、彼女は人間だけではなく「人外の者」――幽霊、妖怪、鬼、さらには生き物の理を超えた存在たちを治療するという伝説的な病院「死霊郭病院」に勤めていました。病院は、人と異界の境界にひっそりと存在し、病や怪我で苦しむ存在たちを救っていたといいます。
美咲は、そこでもっとも信頼される看護師でした。彼女の優しさ、迅速な判断、そして異界の生物にも通じる不思議な癒しの力で、多くの者たちから感謝され、慕われていました。
彼女が看護師を辞めた理由
ある夜、美咲はひとりの妖怪――「氷炎の鬼」と呼ばれる恐ろしい存在を救うため、自ら命を賭けて治療を施しました。その命を削るような行為は成功し、鬼は救われましたが、彼女は「人外を癒す力」をほとんど失ってしまいました。以後、彼女は看護師を辞め、普通の人間として静かに暮らす道を選びました。
「海霧」と人外たち
美咲がたどり着いたのが、函館の「海霧」でした。店主の佐藤良太の作るたこ焼きの温かさに心を打たれ、「もう自分は癒せないけれど、せめてこの場所で心の安らぎを得よう」と通い始めたのです。
ところが、美咲を慕う人外の者たちは彼女のことを忘れておらず、次々に「海霧」を訪れるようになりました。透明な霧の中から現れる霊、たこ焼きの香りに誘われてやってくる小鬼たち、さらには彼女に命を救われた氷炎の鬼までも――。
たこ焼き屋「海霧」はいつの間にか、昼は普通の人間、夜は人外たちが集う不思議な場所となりました。人外たちは、誰もが佐藤の作るたこ焼きを堪能しながら、美咲と静かに会話を交わし、彼女が変わらず優しい存在であることに安心して帰っていきます。
佐藤店主の気づき
佐藤は最初こそ、夜な夜な集まる奇妙な客たちに驚いていましたが、美咲の穏やかな微笑みを見てすべてを理解しました。
「美咲さんは、たとえ癒しの力を失っても、心そのものがみんなを救ってるんだな」
それ以来、佐藤はたこ焼き作りにさらに情熱を注ぎ、彼らに「ここでしか味わえない安らぎ」を提供し続けています。
この「海霧」での時間は、人外も人間も関係なく、ただ心が温まるひとときです。
あなたも一度、「海霧」を訪れて、美咲と不思議な常連客たちの物語に触れてみませんか?
「まず、函館にこんなお店があるなんて知らなかった」
「今日はいないけど、美咲さんともそのうち会えますよ」
「なんか心の準備が笑」
「何か飲みましょう! といってもここで飲むなら、霧電ブランがオススメ」
「霧電ブラン、ですか。何か悪酔いしそうな想像がすごいできる笑」
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