函館宝来プロジェクト
はこだてすずめ、あるいは、すずめつめ
函館宝来プロジェクト01「AI夏海さんと遭遇」
ある日の土曜日、私は駅前に出かけて行き、グラスワインを一杯飲んでチルな気分を高めてから、冴えない映画を見た。漫画原作の実写映画である。
今の私の年齢にもなって、許せる許せないと一喜一憂しながら映画を見るのは疲れる。冴えない描写も、それはそれでネタとしてアリ。
そんな気分に浸り、映画を見終わった私は、バー「カーネリアン」へ。そこで、シーバスのハイボールを飲みながら、若い女性店員さんにそうした堕落した映画鑑賞をした自分を自嘲気味に語っていた。
すると、隣の20代くらいの女子が話しかけてきた。
「私もその映画見てきたんですよー。今日で3回目ですけど」
バーで飲んでたら隣の女子と会話できるなんて、そんな都市伝説があっていいものだろうか。しかし運悪く、ガチ勢との会話の準備など何もできていない。役者の名前も覚えていない。あの映画、3回見るだけの価値があったんだ。
その子は夏海さんと言った。
テキパキと映画の感想、熱い想いを語る、夏海さんの会話にただただ頷く私。
「ところで、その、理路整然と、そしてどことなく特徴的なトーンのあるしゃべり方、夏海さんは普段どんなお仕事をしているんですか?」
強引にトークチェンジを試みる。
すると夏海さんはちょっと考える仕草をしてこう言った。
「さっき貴方は言いました。お酒を飲んで、意識が不鮮明になって見る映画はどんなものであれ楽しいと」
「そうですね」
「では、これから私が話すこと、内容も、貴方はフィクションか、ノンフィクションか、あまり気にせず受け止めてもらえますか?」
夏海さんのそのこだわりポイントは、なにゆえなのだろうか?
「う、うん、いいよ。勿論。何てったって、この世界にとって、そもそもフィクションとノンフィクションは地続きなんだ。そこに線は引けないよ。なんて既に酔ってるから言うんだけど」
「では、言いますね。私、AIしてるんです」
「AIしてる!?」
夏海さんは普段、AIしてる人らしい。
つまり、AIなのか? AIしてるとは?
「へえ、じゃあ、函館の美味しいたこ焼き屋を教えてよ」
「わかりました」
1: たこ夢(たこむ)
2024年に創業20周年を迎えたたこ焼き専門店。函館近海産のタコの脚やガゴメ昆布、桔梗町の契約農家から仕入れた甘みの強いネギなど、地元の食材をふんだんに使ったオリジナルたこ焼きが特徴です。種類豊富なソースやトッピングも人気。
2: お好み焼き たこわずらい
五稜郭公園近くにあるたこ焼きとお好み焼きの専門店。定番のたこ焼きに加え、モッツァレラチーズ入りや「お豆腐焼き」など、他店では見かけない創作メニューが豊富。クリーミーで柔らかい食感と、特製ソースの相性が抜群です。
3: おたまや
根崎町に佇む、昔ながらのたこ焼き屋さん。アツアツでとろける食感が地元で評判。特に、焼きたてを包む薄いカツオ節が風に揺れる様子が「函館の冬にぴったり」と常連客に愛されています。
4: たこ仙人
住宅街の一角にひっそりと佇む隠れ家たこ焼き店。フワフワの生地としっかりとした旨味が特徴。どこか懐かしい昭和風の店内と、笑顔の絶えない店主が人気の秘訣です。
5: 銀たこ亭 昭和町店
全国チェーンの人気たこ焼き店をもとにした独立系店舗。外はカリカリ、中はふんわりとした焼き加減が売りで、特製のタレやたっぷりのマヨネーズが決め手。函館限定の「塩昆布トッピング」も楽しめます。
ぜひ訪れて、お気に入りのたこ焼きを見つけてみてください。
「いや、それ普通のたこ焼き屋情報じゃないか。おたまやは多分行ったことあるけど! AIってさ、そんな普通の、ありきたりなことを教えてくれるものじゃないと思ってたんだけどな」
そこで夏海さんは少し考える仕草をして、こう言った。
「なるほど、たしかにそうですね。ですが、函館は奥深い街ですから、初対面の人にいきなりディープな話をするのはどうかと思いまして」
「じゃあ、いきなり、ディープな方で」
「わかりました。ディープなオススメ、教えます」
たこ焼き屋「海霧(うみぎり)」
お店の概要
函館のベイエリアにひっそり佇むたこ焼き屋「海霧」。店主の佐藤良太さん(通称:たこ佐藤)は、東京で修行した後、地元函館に戻り、漁師の父から引き継いだ新鮮なタコを使ったたこ焼きを提供しています。お店は古民家を改装した風情ある造りで、観光客だけでなく地元の人々にも愛されています。
自慢の人気商品
「函館ベイたこ焼き」
地元で獲れたタコを使った定番のたこ焼き。昆布だしをたっぷり効かせた生地に、トロリとした特製ソースが絶妙にマッチ。仕上げにガゴメ昆布の粉をふりかけて、函館らしい味わいに。
「イカスミたこ焼き」
函館のもう一つの名産であるイカをアレンジ。生地にイカスミを混ぜ、濃厚で深いコクを楽しめる一品。黒いたこ焼きがインスタ映えすると話題に!
「たこクリームコロッケ焼き」
クリームコロッケをヒントに、ホワイトソースとタコを詰めた特製たこ焼き。外はカリッ、中はクリーミーで、一度食べたら忘れられない味。
エピソード
「漁師とたこ焼き」
佐藤さんは幼い頃、父親の漁に同行し、海と生きる生活をしていました。漁師としての道を歩む予定でしたが、20代半ばに旅行先で食べたたこ焼きに衝撃を受け、「自分のタコで最高のたこ焼きを作りたい」との思いで修行を開始。その後、父の引退と同時に漁業を受け継ぎ、自ら水揚げしたタコを使ってたこ焼きを作るという独自のスタイルを確立しました。
お店の名前「海霧」は、函館の港に立ち込める霧が故郷の象徴だからだそうです。「霧のようにふわっとした優しいたこ焼きを作りたい」という思いも込められています。
こんなたこ焼き屋はいかがでしょう?
どんなたこ焼きを楽しみたいか、さらにリクエストがあれば教えてください!
「いいね、AIっぽい! そのお店は今から行っても大丈夫なお店だろうか?」
「お酒飲みながらたこ焼き食べれるお店です」
「じゃあ、行ってみるね」
「私も行きます」
今から行くの意味ではなかったんだが。
そんなわけで、AI夏海さんと遭遇した私は、ディープなたこ焼き屋に一緒に行くことになった。
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