朝日の海
狭霧
第一話 シンカーとシンナー
今、天気は快晴で私は晴れた朝に通学している。通学の便は電車だけど、ちょうど空いてる時間を狙うのではなく女性専用車両に席を置かせてもらっている。海はとても広い。私は朝日を浴びる度にそう思う。
通学路は単純じゃない。労働のあとは続いている。いつも、お疲れ様です。私は単純じゃない足取りで席に着いた。いつも通りの授業が行なわれ私は単純じゃない授業にも慣れてきた。しっかり予習と復習をしてきたから大丈夫なはずだ。そう思うと、やがて問題に、しかめっ面になりながら挑むことになる。私のいつもの癖だ。その日の成績は悪くなかった。しかしやはり木霊して聞こえてくるのは私の失態だ。
「ちくしょう! もう少しもう少しうまくいけば」
そうためらうことなく聞こえてくるそれは、自意識の欠片もなかった。
いつもの様に友人Aに話しかけられると、将来の話について語り合った。たわいのない話だったけれど私の大切な友人だった。その友人Aこと雪ちゃんは私の親友だった。よくボーリングでハイスコアを取っていて大会でも活躍する程の優れた女だった。私のあこがれの的であり、目標であり、話しかけられてテンションが上がってなかったか緊張したものである。その女の子の話に私は阿吽の呼吸で返し、直ぐに引き返したあと、トイレで嗚咽がした。
「う……! 腹が!」
月経が来たのだ。そこまで重くはなかったが早めに早退しようか。とも考えた。それなりに痛かった。
「どうした? 大丈夫」
男の子が私に話しかけた。
「……保健室行く?」
行く……。
そう躊躇って、やはり肩の力を借りながら、保健室に入った。
「すみません……1組の佐藤っすけどこの子」
ふー……
「落ち着いた?」
「ありがとう。名前は……」
「俺? 佐藤歩。佐藤っつってよ。じゃ」
その男の子は私に早退を勧めて足早に帰っていった。
「かっこよかったな」
私は翌日、その子の話を友人Aこと千編雪に話していた。
「痛かった? 大丈夫?」
心配してくれる彼女の視線は、少し痛かった。でも心配してくれてうれしかった。
「しかしいい男だねその子。そんな優男、中々いないよ」
「そっか……」
「うん! ……私振られたばっかだし」
しばしの沈黙がありやがて爆笑に包まれた。
「あっはは! ごめんこんな話しちゃってその男の子と仲良くなれるといいね!」
彼女に後ろめたいところはない。
「むしろ私だよ。反省すべきは、こんなに浮かれちゃって」
「おーい!! 佐藤が呼んでるぜ」
ん?
「もしかして私?」
「おー渡辺。ってかさお前ら何かあったのか」
まあ色々とね。
その男子に付いていくと私の目の前にあの男の子が居た。
「あの、この前はありがとう」
彼がこちらに気づくとうっすら笑った顔を作った。
私は撃ち抜かれそうになった。
「やっぱ、何かあったの?」
会話のトラブルにならないように私はこの場では沈黙を通す。彼も察したようで短い沈黙があった。
やがて彼はこちらを見て。手相を見せて。と、言って来た。この沈黙は長く続いたが、その沈黙は私にとってかけがえのない時間になった。
朝日の海 狭霧 @kuirut
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます