幼なじみ彼女をNTRされた僕はサキュバスの下僕になってしまいました
白鷺雨月
第1話 幼なじみの彼女がNTRされた
「お待たせしました
5度Cはいわゆるカジュアルジュエリーのお店だ。
僕は明日、五月十五日の彼女の誕生日にあわせて、このお店で指輪を予約していた。
「ありがとうございます」
僕は長い黒髪がとても印象的な美人店員のルナさんに礼を言い、会計をすませる。
「彼女さん、きっと喜ばれますよ」
女性店員はきれいな笑みで僕を見送る。
僕は彼女に軽く会釈し、そのショップをでた。
仕事帰りにお店によったので、もう日は完全に暮れていた。
その紙袋がへこまないように慎重に持ち、僕は帰路につく。平日だというのに繁華街の神宮町はかなりの人出だった。
僕の名前は
僕には
同い年で、小中高と同じ学校に通っていた。
いわゆる幼なじみというものだ。
ボブカットがよく似合う、可愛らしい彼女だ。
オタクな僕にはもったいないと我ながら思うほど、里穂は愛らしい。
そんな彼女の誕生日に僕はサプライズで指輪をプレゼントすることにした。もう付き合いは長いので指輪のサイズは知っている。
センスのない僕が悩んでいたら、あの女性店員さんが相談に乗ってくれたのだ。
シルバーの小さな花がデザインされた可愛らしい宝石が乗った指輪だ。きっと里穂は喜んでくれるに違いない。
その光景を想像しながら一人歩いていると、二人組の男女とすれ違った。
背の高い、高級そうなスーツを着た若い男性の腕にボブカットの女性が抱きついている。
その女性は頬を紅潮させながら、背の高い男性の秀麗な顔を見ている。
あれっこの女の人、どこかで見たことあるぞ。
派手なメイクにこれまた派手な洋服を着ているが、見間違えるはずはない。
その女性は僕の彼女の鈴村里穂だった。
「里穂……」
僕はどうにかその名前だけを言う事ができた。
嬉しそうに頬を紅潮させていた里穂の顔が一瞬にして冷めたものになる。
氷のような顔といってもいいだろう。
こんな里穂の顔を見たことはない。
背の高い男は里穂の異変に気づいたようで、僕の顔を見る。その男は口角の片方だけをあげて、微笑する。なんだか、見下された気分になる。
「あんた、こんなところで何してるのよ」
里穂のその口調ははきすてるようなものだった。
「なにそれ、もしかして私に。5度Cなんてありえないんだけど」
僕の勘違いでなければ里穂の視線はゴミでも見るようなものだった。
「だって明日、誕生日だろう」
僕の喉はすでにカラカラだった。今の言葉もどうにかして出したものだ。
「この男が元彼か」
低い声で背の高いイケメンは言う。物理的にも彼のほうが背が高いので、見下された形になる。当然僕はその男を見あげている。
本能的、動物的な敗北感をこの男を見て、感じてしまう。
「そうなのよ、
里穂は僕のことなど見ずに、翔と呼んだ男をじっと見つめている。
それにしても元彼とはどう言うことなのか。
僕たちは別れて居ないはずだ。
半月前もサイゼリアで一緒にご飯を食べたのに。
「君、つきまとうのはよくないな。里穂にはもう近づくな。いいな、わかったな」
翔と呼ばれた男は僕の右肩に手を置く。
置かれた瞬間にわかった。この男の腕力はかなりのものだ。ひ弱なオタクの僕が逆立ちしても勝てない。
僕は背を向けて、その場を逃げさった。
一人、泣きながら繁華街を歩く。
僕は知らない間に別れていて、里穂はすでに新しい彼氏とつきあっていた。
僕は里穂の中でストーカー扱いになっていた。
これほどショックなことはない。
でも、こんなときでもお腹は空く。
僕はたまたまた見かけた牛丼屋さんに入る。
牛丼つゆだくの生玉子つき、さらにサラダを注文する。
慣れた手つきで男性店員は牛丼を調理し、僕の目の前に置く。
「牛丼大盛り、温泉玉子もつけてね。お味噌汁は豚汁でお願い」
牛丼屋さんでは珍しい女性の声が店内に響く。
長い黒髪の女性は僕の隣に腰かけた。
思わず、僕はその女性の顔を見る。
その人はあのジュエリーショップの女性店員のルナさんだった。
「あら、お客様奇遇ですね」
彼女はにこりと微笑んだ。
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