旅勃ち⑥
村の広場に、長老の重々しい声が響いた。
「とうとうこの時がきたのじゃな」
「長老、今更かっこつけようとしてる……」
村人たちはざわめき、ティンコも思わず身を引き締める。
「ワシが生きている間に、この試練の日が訪れるとは……。ムラ村の者たちよ、よく聞くのじゃ」
長老はゆっくりと杖を持ち上げ、村の中央にある巨大なピラミッド……のような、あまりにも大き過ぎる三角木馬を指さした。
「あそこに刺さっているのが、聖剣バイブレード……!」
村人たちが息を呑む。
「伝説によると、かつて勇者バイノマール=ブレイキング=ドスケベは、この剣を生み出した。しかし、その力があまりにも強大すぎたため、自ら封印せざるを得なかった……!」
「……なぜ三角木馬に?」
ティンコが疑問を口にした。
「それは、この剣を抜くには“試練の振動"に耐えなければならんからじゃ!」
長老の言葉に、村人たちの顔が青ざめた。
「な、なんだと!?」
「そんな試練が……!?」
長老は神妙な顔で頷いた。
「バイブレードは、スイッチを入れてキンタマキラキラギンギン力を流すことでメスガキの核を破壊する程の高速振動を発生させる。しかし、並大抵のキンタマキラキラギンギン力ではすぐに枯渇してしまうし、その振動にも耐えられんのじゃ……」
「欠陥品じゃね?」
村人のぼやきを、長老は聞かなかったふりをして続ける。
「そして、この試練を乗り越えた者こそが、バイブレードを手にし、メスガキ四天王を討つ勇者となるのじゃ……!」
「メスガキ四天王……!」
村人たちがゴクリと喉を鳴らす。
「長老、メスガキは夜行性のはずでは!?」
「確かにメスガキは夜を好む。しかし……」
長老は杖を突き、村人たちを見渡した。
「古の書物によると、中には昼間活動する者や、日中問わず "24時間営業の者" までいるらしい……」
「コンビニかな?」
ティンコがぼそっと呟いた。
「書物にはメスガキ四天王のことも書いてあった。オフィスレディー、ダンチヅマ、ウラアカ、ガッキュウイイン……そして━━イナカニスムイトコノカッショクロリ……! 他にも多数のメスガキ四天王がいるらしい」
「……もう既に四人越えてるな」
ティンコの顔が引きつる。
村人たちが震える中、長老は深く息を吸い込んだ。
「さあ、勇気ある者よ!! 誰か、この試練に挑む者はおらんのか!!!」
村人たちは顔を伏せた。
「……いや、ちょっとその……」
「俺には家族が……」
「最近腰が痛くて……」
沈黙が広がる中、ティンコは静かに前に出た。
「……俺がやる」
「えええええ!?」
村人たちが驚愕する。
「ティンコ!?」
「君のキンタマギラギラギンギン力は小さすぎて無理だ!」
「ティンコ、俺の嫁になってくれ!」
「うぐっ……!」
そう、ティンコにもキンタマギラギラギンギン力はあるが、それはあまりにも小さい。
彼の起こせる奇跡といえば、何か雨が降りそうなときに関節に違和感が出るぐらいだった。
しかし、フワリが前に進み出た。
「ボクにはわかる……」
彼はティンコをまっすぐに見つめた。
「ティンコの キンタマギラギラギンギン力"は━━恥ずかしがり屋さんで、今は衣を被っているだけ……」
「言い方ぁ!」
ティンコはちょっと興奮したが、ちゃんとツッコミを入れた。
「ティンコにそんな力が……!?」
村人たちがどよめく中、ティンコは深呼吸し、三角木馬を見つめる。
ついに、試練の時が来たのだった。
神慟悪滅バイブレード あにうえ @aniue
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