5−6

「バレちゃしょうがないね! 戦うしかないっ!」


 シュンと4人の戦士は、マントを脱ぎ捨てる。


「面白い。お前らの魔法は私たちには効かんぞ!」

「やってみねぇとわかんねぇだろ! 地面を揺らし、地下より熱い魂を復活させよ! 揺れる情熱の焔メタタロウ!!」


 ウィンが火の魔法を放ったが、戦士の体が大きく魔法を弾く。


 それを見た高坂は……。


「アルミ箔だな、あれ」

「だから、そうだろうと思ってるけど! なんなんだよ、おめぇは! 戦士がアルミ箔かぶってるっておかしいってのはわかるよ。でも、そんなこと今は関係ねぇだろ?」

「うーん……なんだけどさぁ、あの鎧とか、なんかちゃっちいよな。もしかして、アルミ箔でできてたりして(笑)おい、サキ。ちょっくらバタフライナイフで切り裂いてみてよ」

「はぁっ!?」

「いいからやれ!」

「うわっ!」


 高坂に蹴られて、オレは戦士の前に出る。


「なんだ? 次の相手はお前か? 私に魔法は効かんぞ?」

「出ちまったらやるしかねぇな! おりゃあぁぁっ!!」


 ポケットからナイフを取り出すと、ザッ! ザッ! と鎧に刃を向ける。――切れる!? やっぱこれ、アルミホイル!?


「う、うわぁっ!?」

「もういっちょ。ほれ!」


 頭に着けていたアルミ箔を切ると、オレはシュンに言った。


「シュン! ちょっと魔法かけてみろ!!」

「う、うんっ!! 流れる川のせせらぎよ、彼の脳へその歌を届けよ! 揺れる精神ヘドバンギャー!」

「……うっ……」

「お、おい、何の魔法をかけたんだ?」

「精神乗っ取りの魔法だよ、聖女のお姉ちゃん」


 精神乗っ取り魔法……? 催眠術的なもんだろうか? でも、そんなもの効かなくなったって……。


「……失礼いたしました、シュン様」

「!?」


 周りの見ていた国の人たちが一斉に城のほうへと走り出す。もしかして、魔法って……。


「5Gかよ!! っていうか、5Gの都市伝説かよ!! アルミ箔巻いてろって、ネットスラングだぞ!!」

「いやぁ、私の読みは当たったようだな。おい、お前ら! 今のうちにアルミ箔を巻いていない国民を洗脳しろ!」

「おうっ!!」


エルフたちは5人同時に呪文を唱え始める。


「「「「「うたかたの魂たちよ、この呪われし国の民たちの脳に聖なる歌声を響かせよ!! 燃え盛る鎮魂歌! 悪夢の輪舞曲エルフズ・ロンド!!!」」」」」


「うわああああ!!!!」


 周りにいた人たちが、頭を押さえている。これは……精神攻撃? えぐっ!! エルフえぐっ!!


 周りにいるおばちゃんも子どももおじさんも商売人も全員がその場にうずくまる。そしてしばらくするとーー。


「エルフ様、ばんざーい!!」

「きゃぁぁぁ!! エルフ様たち、今日もステキぃぃ!!!」

「結婚してぇぇぇ!!」


いや、ちょい待て。この魔法も魔法で、危ないんじゃ? 洗脳された人間たちが、暴徒化してエルフたちに突撃してくるぞ?


心配していたら、シュンが手を軽く上げた。


「ごめんね☆ ボクら、ファンサはしないんだ。その代わり、防具を全部切り刻んでくれるかな?」

「おうっ!!!」

「はいっ!!! エルフ様の仰せのままに!!」


 ……行っちゃった。村人たち、防具屋的なところや城のほうに行っちゃった……。これってもしかして、国、ヤバいんじゃ……?


「さ、防具の弱点も知ったことだし、村に帰ろうぜ。私の役目は終わりだろ」

「あ、あぁ……そうだな。こんなところ危なくていられねぇ」

 

 高坂がエルフたちに声をかける。オレももうこんなところに居たくない。というか、さっさと日本に帰りてぇなぁ……。


 門番も同じように倒すと、最後にシュンはさらっと呪文を唱えた。


「えーとっ☆ この忌々しき悪魔の住む国よ、等しく天の裁きを受けよ。死の呪いディスティネーション!!」


 パーンと空に何か走ったかと思ったら、それが国に落ちた。……隕石……。国は破壊された。


「あー疲れた、うまいもん食いたいなぁ……」


 腹がへったらしい高坂を背に、オレは遠い目でその様子を眺めていた。

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