5−5

 コフィン国は割とまともな国のようだった。人はたくさんいるが、まるでヨーロッパの田舎みたいな街並み。木でできた小さな家が並び、馬車などが行かい活気もある。


「あっ、果物!」

「シュンのおじちゃん! ふらふらしないで!」

「あ~ん、新しいお洋服出てる~!!」

「おいっ、ネオ! ふらふらすんじゃねぇ!」

「……」

「お前もつられんな! ヴィーナ!」


 ディディは年上のはずのシュンを引っ張るので精いっぱいだし、ウィンはネオとヴィーナを止めるので大変だ。


「それで? 潜入したのはいいけど、お前に案はあるのか? 高坂」

「失敗したことがひとつある」

「なんだ?」

「私、こっちの国の聖女のほうがよかったな」

「いや、そういう話じゃねぇし!!」

「だって、エルフたちって見た目だけしかよくねぇし、こっちの国の人のほうがまともそうだし……」


 高坂が『エルフ』と口にした瞬間だった。国の人たちが一斉にこっちを向く。その視線はまるで敵をにらむような……。えっ、もしかしてこの国、『エルフ』って禁句!?


「え、エルレだろ!? 何言い間違えてんだ!」

「えっ……私は何も」


 オレは高坂の耳にしっかり入れてやった。エルフたちも高坂の周りに集まる。


「気―づーけ!! なんかこの国の人たち、『エルフ』って言葉に敏感なんだよ! おい、おめぇら何やったんだよ」

「何って……一度洗脳して、私たちの織物とかを織らせて、町中に飾らせただけだよ?」

「織物……?」


 わりとまとも(に見えるだけ)のディディの言葉に高坂が首をひねっていると、ヴィーナがくねりながら言った。


「僕らの……美しい肖像画を書かせたり……肖像画を織物にしてもらったりしたんだ……」

「ああ! つまりポスターみたいなもんか」

「いやいや、納得すんな、高坂。『洗脳して』って言ってるじゃん! こいつら、洗脳して国にポスターとか肖像画を貼らせるって、一体どんな神経してんの!?」


 ツッコミに忙しくしていると、オレたちに兵士みたいな男たちが近寄ってくる。鎧みたいなものを着て、頭に……なんだ、アレ。銀の何かを巻いている。バンダナ? にしてはペラペラしてるような。例えるなら、幼稚園の時作った紙を頭に巻いただけの王冠みたいな。太陽の光に反射しているあたり、アレのようだ。


「アルミ箔……?」

「おい、お前ら今『エルフ』とか言ったな? 旅芸人の一座と聞いているが……怪しい」

「えぇ~? 怪しくなんてないよぉ。おじちゃんたちこわーい」

「……デイヤ村の最年長戦士は確か少年の姿をしていたはずだ。お前、顔を見せろ!」


 これは……もしかして、大ピンチなんじゃ!?


「…………」


 高坂、何か手はあるのか?

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