5−3

「…………」

「なんだ、サキ。けなし文句でもつけてくると思ったんだが」


 踊り子に変装した高坂は、思った以上にかわいかった。ネオがやったのか、ほんのりメイクもしてるようだ。そしてなんといっても胸とウエストが強調されている。胸はともかくケンカするだけあって、きれいに腹が引き締まっている。

 しかも……顔も結構オレの好みだ。


「サキ?」

「お、おう!」

「大丈夫か?」


 風が吹くとベールがふわりとする。何か香水みたいなのもつけているんだろうか? いい香りもする……って! こいつは高坂だぞ!? 本人も心配してるけど、本当に大丈夫か、オレ!


「い、いやあ、馬子にも衣裳とはよく言ったもんだな」

「おっ、案外褒めてくれるのな」

「バッ! 今のは褒め言葉じゃねぇよ!」

「まぁ? 下僕くんがドギマギしちゃうのはわかるわよ。だってこの聖女より美しいあたしが! メイクとかしたんだもの」


 ネオ……確かにこいつは男だけど、高坂より美人だな。だけど、それを自分で言うか?

 呆れていると、ナルーさんが手を挙げた。


「さぁ、聖女と下僕、5人の戦士よ! 今こそときは来た! 敵国へ潜入するのです!」

「なんでナルーが仕切るの」


 シュンがツッコむと、ナルーさんがしょぼんとしたように言う。


「私もおしゃれしたかったなぁと」

「あぁ? だったらお前も変装してくればいいだろ?」


 ナイス正論、高坂。


「でも私はこの村を守る神官ですから……では精霊の祝福があらんことを」

「……ナルー、魔法が使えないと戦力にならないんだ」

「あっ、そういうことか」


 ヴィーナの耳打ちに高坂とオレは納得する。魔法が効かない相手だったら、ただの足手まといだといいたいんだろう。


「それじゃ、行くか!」

「おうっ!」

「それで、国はどっちだ?」


 高坂が音頭を取ったと思ったら、場所知らねぇって! まぁそりゃそうだ。オレたちはコフィン国までどうやって行くのかなんて、全然知ったこっちゃねぇ。


「私たちが連れて行くよ、安心して」

「その代わり! 敵に会ったら倒してもらうからな!」


 ディディとウィンが言うが、ウィン……あまりにもオレらを当てにしまくってるだろ。

 まぁいいか。この世界の敵なんて、今のところたかが知れている。川の精霊みたいなのも倒せたしな。


 こうしてオレたちは村を旅立った。

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