4−3

「家に案内したくねぇからって、馬小屋に泊まれってのはねぇよな」

「まぁ、藁があるだけマシなんじゃないねぇのか? ……しかし、一癖も二癖もあるエルフたちだな。高坂ァ、おめぇ明日からどういう訓練を考えてるんだ?」

「訓練も何も、1対1でタイマン張れば実力がわかると思ってる。お前は魔法にかかっちまうだろうけど、私はなぜかマジックキャンセル能力があり、かつ静電気をパンチや蹴りに上乗せできるからな」

「ずいぶんザルな考えだな。相手、武器も使うだろ? シュンが青龍刀みたいなの持ってたぞ。本気でタイマン張ってきたら、おめぇ殺されるんじゃ……」

「なぁに、なんとかなるんじゃねぇの? 今日だって、一応『なんとかなった』だろ」

 ふかふかに敷かれた藁の上にに寝そべりながら、高坂は不敵に笑うが……。


「異世界に転移しちまったっていう状態で、すでに何とかなってねぇんだけど」

「だーかーら、明日エルフたちと戦ってみて、勝てそうだったら脅したり人質に取ってナルーに元の世界へ帰してもらえばいいじゃねぇか」

「そういう手か」

「でも、『聖女』として村人に力を分け与えたってことにすりゃ、もしかしたら……」

「ん? まだ何か考えがあるのか?」

「あたぼうよ! もしかしたら、イケメンを従える女王様……いや、エルフ族の姫になれるかもしれねぇじゃん! 私、姫って憧れてたんだよなぁ。どこのチームも私を姫にしてくれねぇんだもん」

「姫って、もしかして、『ヤンキーの女』って意味の?」

「そう! っていうか、私はどう考えても『守られる側のか弱い少女』だろ!!」

「……なんだ、もう寝ぼけてたのか。オレも寝よ」

「おい、サキ! 誰が寝ぼけてるだって!?」

「うっせぇよ……今日はもう閉店だって。さすがに眠い」

「ま、まぁそうだな……くそっ!」


 そう言ってオレに背を向ける高坂。オレも高坂と背中合わせになり目を閉じた。

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