第10話 これ又、苦い思い出(若江岩田駅)
少し長くなりますが、僕の失恋話を一話お伝えします。
高1の夏休みの頃の事です。
同じ野球部の部員とアルバイトを始める事に成りました。
その内の一人(M君)が他校の女子生徒をどうにかして説き伏せて、総勢7人ほどでアルバイトが始まりました。
その女子の中にM君が中学の時から恋焦がれて居た子(Oさん)が居ました。
僕はそのOさんの友達で同じ学校に通って居た子(Aさん)に好意を寄せたのです。
バイト先は確か布施辺りに在った海苔工場でした。
行き返りは近鉄奈良線を利用し、僕は瓢箪山から、M君とOさん、それにAさんは若江岩田から通って居ました。
バイト先では男女それぞれで部署が違って居て、言葉を交わすとしたら行き返りの時しか有りませんでした。
僕のAさんに対する想いは日毎高まって行きましたが、中々、話をするきっかけが掴めませんでした。
その内に、アルバイトの期限が来てしまい、結局、Aさんとは殆ど会話できず仕舞いでした。
さて、夏休みも終わり二学期が始まりました。
幸いな事に、通学時にOさんとAさんを、当り前の事ですが、若江岩田のホームで見かける様に成りました。
僕は何とかきっかけを思い、出来るだけ彼女たちと同じ電車に乗るようにしました。
彼女達はN商業高校に通って居て、若江岩田駅から布施駅へ、それから、大阪線に乗り換えて行きます。
事も有ろうか、僕は自分が下りるべき八戸ノ里駅を素通りして布施駅まで度々足を伸ばしました。
不審に思われても仕方が有りませんが、淡い恋心に操られて居たのでしょう。
頻りにAさんに視線を投げかけては気に掛けて貰おうとしたのですが、却って、それが禍いしたようです。
Aさんのみならず、Oさん迄が冷ややかな目線を投げかけて来るように成って行きました。
それにもめげず、僕はAさんへの思いを込めた手紙を書き、通学時に手渡しました。
それも又、逆効果だったようです。
ストーカーまがいの行為をして居た後でしたし、それ以降はけんもほろろで、完全に無視される様になって仕舞いました。
全くの完敗に終わった僕が、彼女たちと同じ車両に乗らない様に成ったのは言うまでも有りません。
まぁ、通学時にその様な思い出が一つ出来た事で、今では、それなりにその事をのほほんと記憶の小箱に仕舞い込めて良かった様な気がして居ます。
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