第2話
まじまじと彼女の顔を見る。ふっくらとした頬は赤みを帯びていて、とてもあどけない。
そんな彼女の顔を見ながら、自分の母親の絵を描く。……こんがらがりそうだ。
気を抜けば、見たまんま幼い彼女の似顔絵になってしまいそうで、意識的に皺を入れてみる。
──こんな感じになっているかな。
母の顔はうろ覚えだ。
亡くなったのは今から二十年近く前、私が幼稚園の頃のことだ。
少女の顔を見ながら描いた母の顔は、我ながら上出来だ。
笑うと下がる目尻。一番覚えている母の特徴と目の前の少女の目尻が似ているからだろうか。うろ覚えだったはずの母の顔はこれ以上ないと思うほどしっくりきた。
互いの絵が完成すると、彼女はすくりと立ち上がり帰り支度をはじめた。
「お家どこ? 送っていくよ」
私の言葉に、彼女は「あっち! すぐ近くだよ」と言って指を指す。
“あっち”なら、私の家を通っていくようだ。そうだ、買ったばかりのチョコレートがある。おみやげに持たせよう。
玄関を開けると、ばあちゃんがいた。ばあちゃんは私達を一目見ると「ひぇ……」と小さく声を発しながらへたりと座り込んだ。
「ばあちゃん! 大丈夫!?」
意識ははっきりしているようだが、呆然とした様子で一点を見つめている。視線を追うと、その先には少女が立っていた。
「……美世……」
美世って……亡くなったお母さんの名前……?
「どうして私の名前を知っているの?」
不思議そうに問い掛けたのは、私が連れてきた少女だった。
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