第24話 決断
――それから、歳月は経過して。
「……そろそろ、だよね」
六条院の春の町――その一室にて、一人そんな呟きを洩らす。この
……まあ、変わったと言っても、それはやはりと言うか……まあ、ほぼ時短の間に行われていたことで。具体的には、優に十年以上が経過した時短の間に。
とは言え、今回は
だけど……今回は、今回ばかりはあの神様の気まぐれというわけでもない気がして。……むしろ、今回はたぶん――
「――少し良いかい、
そんな思考の中、静かに襖が開き重々しい声が届く。視線を向けると、そこには声音に違わぬ深刻な
「……それで、如何なさいましたか?
そう、彼の言葉に答える形で尋ねる。……まあ、言わなくても分かるけどね。
すると、深刻な
「……どうか……どうか、不快に思わず聞いてほしいのだけど……この度、
そう、真っ直ぐに話す源ちゃんを無言で見つめる私。まあ、やっぱりそうだよね。
さて、朱雀院の姫君とは
「……その、言い訳がましくはなるが、私はお断りする所存だったのだ。だけど……ご病気のためか、院があまりにも弱られていてね。そのような状態で、頼る者が私しかいないと仰せられて、それで……」
すると、私の反応をどう解釈したのか、少し覚束ない口調で事情を説明する源ちゃん。まあ、当然のこと
……まあ、それはともあれ返事を。今一度、改めて彼の
「……どうか、お謝りにならないでください。他ならぬ朱雀院さまのご要望なのです。お断りできようはずなどないことは、不束者の私でも承知しております」
「……紫の君」
そう伝えると、少し驚いた様子で呟く源ちゃん。怒ると思ったのかな? まあ、そう考える方が自然かも。
「……さて」
「……紫の君?」
思わず、そんな言葉が洩れる。……まあ、分かってはいたけど……うん、やっぱりそうみたい。軽く首を傾げる源ちゃんへ、徐に口を開いて言った。
「……お願いがあります、源氏の君。どうか――私に、出家の許可を頂けませんか?」
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