ゆるゆる文豪足跡たどり
飛鳥井 作太
序章 隣の転校生は何する人ぞ
第1話 南雲瑞穂さんは変わっている
転校生・南雲瑞穂さんは、一風変わった転校生だった。
十月。二学期半ばという中途半端な時期にやって来たのはもちろんのこと。
「あれ、南雲さん。また居ない」「トイレ?」「私いまトイレ行ったとこだけど居なかったよ」
彼女は、休み時間の度いつの間にか教室から消えるのだ。
赤い髪に緑の瞳、お人形みたいに整った顔で、落ち着いた声が心地好い。そんな彼女とお近づきになりたいと願う人は多いのに、毎度煙の如く消えている。
「いつも何処に?」と聞く人は絶えないが、「早く慣れようと思ってそのへんを」と微笑まれ、おしまいだ。「案内するよ」の前に「一人で歩かないと慣れないから」と先手を打つところなど、なかなかどうしてお見事だと自分は密かに感嘆した。
当然、放課後も気付けば居なくなっている。
ミステリアス。
だが、一週間したくらいで、彼女についてさまざまな目撃情報が流れるようになった。
曰く、ひがし茶屋街で写真を撮りまくっていた。曰く、何の変哲もない住宅街を行きつ戻りつ写真を撮っていた。曰く、とあるカフェの前で写真を撮りまくっていた。曰く、とある小学校前で黄昏れつつ写真を撮っていた。曰く、浅野大橋の上で川を見つめてずっとにこにこ微笑んでいた(もちろん写真も撮っていた)……などなど。
「観光地に越して来たのが珍しいのかな?」「でも観光地じゃないところでも写真撮ってるよ」
謎だ。
……そんな謎めく彼女の秘密に、自分は触れてしまった。それはまったくの偶然で、ひょんな出来事からだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます