第13話 ギルド【アルカトラズ】③

 モンキーを跳ね飛ばした後に身体は悲鳴をあげた。


 先程まではアドレナリン全開で痛みを忘れていたのか急に身体の節々が思い出したかの様に軋み始める。更には身体はだるく、全体に熱を帯びて吐瀉物を吐き散らした。


「なんだ……これ……!身体、がっ!」


 『私に委ねて』


 「声?あっ……」


 意識を持っていかれそうになり視界は急速に回転している。更に身体から赤色のオーラがゆらゆらと不気味に動き回っている。


 「はぁ……はぁ……何が起きて……」


 「ふーっ。やはりそうか。どうしてあの方達がこの依頼を俺達に寄越したのかようやく分かってきた。ノードレスの中でも一定周期に現れる"呪われた子供たち"だな」


 「呪われた……子供たち?」


 フォックスの言っている意味は分からなかった。だが意識が遠退く中で見えてきたのはとある景色だった。




※※※※※※※※※※※※※※※※※




 「どうして……どうして俺たちを攻撃するんだ!!」


 燃え盛る炎の中で男は叫ぶ。しかしその言葉は遠く誰の耳にも聞こえはしなかった。そして喉元を掻き切られて男は死んだ。


 「ここで終わりなの?私らここまでやってきたのに?」


 「この、裏切り者があああああ!!」


 襲い掛かる男女も呆気なく殺されてしまった。それも徹底的に、見るも無残に。


 「俺達がお前らを殺したいと本当に思っているのか!!これは、これはもうどうしようもないんだよ!!」


 仲間の腹部に自らの剣を何度も何度も刺して、泣き崩れた男は座り込んでしまった。


 「あとはお前だけだ。アリアナ」


 「アテム」


 アリアナは抵抗する事なくアテムの剣を受け入れた。全ての結末に終止符を打つ必要がある。だが、目的と使命は違う。


 「私たちが生まれた意味、生まれ落ちた意味。それは私たちヨルムンガンドの使命。運命は変わらないわ。【天地開闢】発動」


 逆再生するかの感覚で流れる映像は高速に動き出して光の線となる。そして流されるまま光の中へと消えて行った。




※※※※※※※※※※※※※※※※※




 パチパチ


 炎が焼ける音がする。それにイイ匂いも。


 「おや、目を覚ましたかい」

 「おはようレイくん!」


 バーバラとイオリは古ぼけた石造りの家の中で鍋料理をしていた。どうやら眠っている間に戦闘は終わった様子だった。


 「あれからどうなったんだ」


 「バベルの連中は空高く飛んでった猿の面以外は手を引いた。ま、あの様子じゃまた攻めてくるかもしれんがの。それでも奴らも迂闊には手を出しては来まいて」


 「なんでそんな事がわかる。もしかして呪われた子供たちっていうのが関係あるのか?」


 バーバラは小さく溜息を付いて火の中に木を入れた。


 「呪われた子供たち。それはノードレスで生まれ落ちた中でも唯一特殊なノードを持つ者を表す言葉じゃ。約20年に1度そういう者が現れては絶塔へと挑み、ひたすら嵐を呼んでは散っていく。危険分子と考えた街のお偉いさんはノードレスが絶塔へ挑んだ場合特別措置を行う事とした」


 「特別措置?」


 「それがバベルのお仕事っちゅうわけじゃ」


 一体全体何を話しているのかは分からないが、バベルがレイを狙って攻撃してきた理由は分かった。恐らくだが本当にアヴァゴウラが2層に現れた理由とレイのノードの力は関わっているのかもしれない。


 「我々は呪われた子供たちは身体の出来上がる頃合いのだいたい20年前後に1度生まれてはヨルムンガンドのノードを得て10層を目指しておる。これがずっと今まで続いて来た歴史なのじゃ」


 「どうしてアリアナ達は死して尚10層を目指しているんだ?」


 「それは行ってみんと分からん。三天神と何があったのかもな。とにかく絶塔へはこの5人で向かう事になる。それに加えて街では恐らく生きていけんじゃろう」


 「それってつまり、どういう……」


 「今夜から絶塔へ行き、我々【アルカトラズ】と戻らぬ旅を共にするという事じゃ」


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アルカトラズ・ファウンド 小東凛太郎 @orin345

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