第39話「称号」
それからしばらく3人は談笑し、そして後藤の希望で、後藤は物言わぬ後藤に戻った。
人間に害をなしそうな旧支配者の眷属を察知したからだ。
舞台は再び北米大陸に戻る。
「おおウェンディゴよ!歩む死よ!風に乗りて歩むものよ!大いなる白き沈黙の神にして、トーテムに印とてなき神よ!!畏れぬものに死を!!畏れる者にも死を!!」
晴れていればカナディアンロッキーが見えるはずだが生憎の吹雪で何も見えない。
「そんな物騒なモノ、崇拝しても何にも良いことないって知ってた?」
ウェンディゴを崇拝する毛皮姿の狂信者たちにシュブ・ニグラスが声をかけた。
「うるさい女!ここは聖域!ウェンディゴ様を畏れぬ人間には高い空からバツが下るのだ!お前が次の生贄だ!!」
狂信者たちは鋭い石器を握って「生贄だ!」と口々に叫ぶ。
「こちらの女性はあまり生贄向きじゃないと思います。おやめになったほうがよろしいかと。」
黒いコートで震える男が忠告した。
すると狂信者たちから悲鳴が挙がる。
「ウェンディゴ!!」
強い吹雪の中に恐ろしくのっぽな影がぼんやりと現れた。
「後藤さま、奴が来ました。」
狂信者たちは一層けたたましく礼拝の声を上げる。
「おおウェンディゴよ!歩む死よ!風に乗りて歩むものよ!大いなる白き沈黙の神にして、トーテムに印とてなき神よ!!畏れぬものに死を!!畏れる者にも死を!!吹雪とともに来たれ!!」
シュブ・ニグラスは先にこいつらを黙らせたくなっていた。
でも頭がオカシイとはいえ人間。
後藤さまの手前、それだけはできない。
吹雪の積雪で埋まりそうになってる後藤がゆっくりと立ち上がった。
「くるってるのか!人間ふぜいが、たった3人でウェンディゴ様に何する気だ?!」
ナイアルラトテップもさすがに少し苛つきながらこたえた。
「まず、我々は狂っていません。また人間ふぜいはむしろ貴殿らの事です。そしてたった3人で何かするわけではなく、後藤さまが1人でやります。」
そういった瞬間、後藤は刀を抜き放った。
全身から湯気が立ち、体に着いた雪が解けて蒸発をはじめる。
狂信者たちが静まり返る。
「色々のたまっておられましたが、よくお聞きください。おお、わが主、後藤紳!無敵の剣士よ!寡黙な殺戮者よ!正義の傀儡よ!邪神の屍を踏みしだく者よ!人間の守護者よ!畏れぬものに服従を!畏れる者に加護を与えたまえ!!」
後藤はウェンディゴ、つまりイタカの片足に近寄ると横なぎに薙いだ。
片足が切断されて崩れかかる。
すぐさま後藤は反対の脚を切断すると、両足の長さが揃うことでバランスが保たれた。
「ふ……吹雪が!?」
狂信者たちがうろたえる。
いつの間にか吹雪が止んで快晴の空。
そして信者たちですらまともに見たことが無いイタカの吹雪に埋もれていない姿だ。
イタカは後藤をつまみ上げようとするが、後藤はイタカの動きを無視して、両方の脚を交互に撫で斬りにし続ける。
輪切りになった脚が、だるま落としのように散乱している。
上空にはまたも報道のヘリが飛んでいる。
局地的な吹雪を撮影しようとしたのだろう。
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