第15話

22時を回ろうとしていた。

3人はお酒を飲みながら話し続けていた。

ふと時計を見たハルが話を遮った。


「嘘、こんな時間になってる」


藤森が茶化すように言う。


「なんだなんだ、シンデレラ気取りか〜?」


「そうよ〜だからまた血眼になって探して」


そう言って残った酒を飲み干す。


「受けて立つ。今日も俺の奢りだ、倉沢の分もな」


「さすが、消化器内科部長。ごちそうさま」


ハルが立ち上がると、倉沢も立ち上がった。


「送ります」


「おっと?」


藤森が驚いたように倉沢に目を向けた。

ハルは苦笑いしながら、首を横に振った。


「大丈夫、1人で帰れるし、いつもそうしてるから」


ハルは「ありがと」と2人に言い、「ごちそうさま」と店員に言う。

そしてさっさと店を出て行ってしまった。


「藤森先生、すみません、ごちそうさまです」


「オッケー」


倉沢は小走りに店を出た。

ハルは酔っているのか、気ままなのか、フラフラと歩いている。


「尾崎さん」


駆け寄った倉沢にハルは立ち止まることなく笑った。


「倉沢〜ほんとに大丈夫だってば」


「別に心配はしてないです」


「知らない人と飲んで、まあ今日は違うけど、1人でのんびり帰るのが好きなの」


「じゃあ今日は違うので」


「は?」


倉沢が立ち止まったので、ハルも立ち止まった。

倉沢は困ったように少し俯き、顔を上げてハルを見た。


「じゃあ、退院のとき見送れなかったので」


ハルは驚いて、困ったように少し笑う。


「でも、患者を毎回見送れるわけじゃないでしょう?」


「でも、初めて受け持った患者なので」


ハルは今度は吹き出すように笑った。


「分かった、倉沢先生」


倉沢はホッとしたように微笑んだ。

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