第20話

「魔物を……殺す……?」


「騎士の国の王子なら、魔物なんて何匹か殺してるでしょ?今更気にする必要なくない?」


ボタンの発言に、俺の背筋が凍りつく

彼女は本気だ…

この先の発言で、彼女の、そして俺の行く先が変わる


「確かに、昔はそれが正しいと思っていた。だが今は違う。魔族にもちゃんとした生活があり、俺らを襲うのも理由がある、罪のない魔物を無差別に殺すのは良くない!」


「ふーん……カモミは知らないだろうけど。魔物ってね、殺すと『経験値』が貰えるんだよ。貴方も『レベル』が5だし、知ってるだろうけど」


経験値……レベル……

強くなるには魔物を倒すことが最大の近道だとは知っている

この世界はただ剣を振ったり、模擬練習をしても

強さとしては大したことは無い

魔物1匹殺す事にレベルは上がり

その上がり幅は魔族を超えることもあると


だが我が父は、特訓もせず魔物だけを殺して強くなった者が

騎士になる資格は無い、と言っていた

俺も魔物を殺すのは、民が死ぬ可能性がある時だけに留めていた

だから……俺はこれからもそうするつもりだ


「……そっか。そんな悠長なことしてる暇ないだろうけどね」


ボタンの発言と同じタイミングで

5m長の大きなゾンビが姿を現す

な、なんて大きさだ!と思い槍を構えるが

横から突風が吹き、その場を見ると

ボタンがゾンビの元へ走っていくのが見える


瓦礫やゾンビの攻撃をひらりと交わしながら走り

ボタンを掴もうとしていた腕を刀で一斬りで真っ二つ

ゾンビは「ぐおおおおおお!」と苦しみ悶えている

ボタン…あいつが戦うところは初めて見たが

……あんなに強かったのか


しかし、ゾンビは意思や痛みがない

と聞いたことあるが

そんなことより、ボタンを止めなくては!と思い

体を斬ろうとしているボタンを槍で受け止め制止する


「やめろボタン!こいつは普通のゾンビとは違うかもしれない!攻撃をやめるんだ!」


「邪魔を……しないで!」


とんでもない力で押しきられ

地面に叩きつけられる倒れてしまう

やはり、いつもと様子がおかしい!

なんとしてでも止めなくては!

と倒れた際に離れた槍に手を伸ばそうとするが

ボタンに手を足で踏みつけられる

「ぐあ!な、なにを!」と顔を上げると

なにやら、心臓の部分を抑え、苦しんでいる


「ぅ……うぅ……」


「ボタン!しっかりしろ!」


「もゥすぐダ…もうスグで……あa……やめて……私の中で……暴れナイで……」


なにかと……戦っている……?

しかし、ゾンビは俺らを待ってくれるはずもなく

足で踏み潰そうとしてくる

ま、まずい!と咄嗟に動こうとするが

それよりも前に、ボタンは刀でゾンビの足を斬り落とす


「…………アハ、アハハハハハハハハ♡」


ボタンはまるで人が変わったかのように

薄気味悪い笑い声を上げながら

瓦礫を使ってジャンプし、ゾンビのあらゆる箇所を切りつける

俺は、その姿を、ただ眺めることしか出来なかった


ものの数秒で、大きな広い部屋は、血の海と化し

ゾンビは倒れ、トドメの一撃を刺したボタンがその上に立っていた

苦しみ悶えながら、体の至る所がビキビキと鳴り響き

『強くなっている』ことが分かる


「あぁ〜♡この感覚!たまらない♡でも……まだ足りない……」


ボタンはそう言って俺を見つめる

俺は思わず槍を構え、「ボタンでは無いな!誰だお前は!」と言う

するとニヤリと笑ってこう言った


第20話【繧ー繝ュ繧ュ繧キ繝九い】

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