第12話

「勇者の…娘…?」


「確かに、勇者と魔王さ…んんっ、魔王が戦ったのは、お嬢様が産まれる少し前のはず。勇者に娘がいてもおかしくない年代では?」


確かに、見た感じ私と同い年だし

ありえない話じゃない


「えと……勇者の剣を持ってるのには訳があるの。実は、その、私が抜いちゃって……」


「なんであたしじゃなくて……とにかく!それよこしなさい!」


サンゴに強引に剣を奪われるが

すぐに「くっ、重いっ……!」と床に落としてしまう

…重い?確かに、剣にしては重かった気がするけど……

と思いながら剣を拾う。落としちゃうほど重くは感じない


「……やはり勇者の娘というは嘘なのでは?」


「いや、リア君、彼女は正真正銘の勇者の血を継いでる娘だよ。一度薬を渡しに村へ訪れた事があるからね」


「では何故彼女は勇者の剣を持てないんです?」


「ん〜うちには分からないが……そもそも相棒も『装備できている』とは限らないぞ」


装備出来ている……?

よく分からない単語が出てきてポカンとするが

アイボーは続けて話した


「本来、武器というのはその人間に合うかどうかで装備が出来る。どんなに軽いナイフだったとしても、装備出来ない人間が持つと、サンゴ君みたいに重く感じるんだ」


そう言ってアイボーは

リアに剣やナイフ等の武器を渡す

全部同じ重さらしく、リアが全部持ち比べると

ナイフと鎖の両端に錘(おもり)のついた武器が軽いと言った

この鎖は、分銅鎖(ぶんどうくさり)というらしい

私が試しに持ってみると

全部似たような重さをしていてよく分からなかった


「この前ウルルルフの攻撃を抑えた所を見た時に、相棒の力は魔物以上だと気づいたんだ。つまり!その勇者の剣は相棒自慢の力で強引に抜かれた可能性がある!これは興味深い話だよ!!」


道具や武器のことになると

目を輝かせながら語るアイボーの言葉に

少し違和感を感じた

確かに私は魔族だし、魔王城でサッカーをした時も

力加減難し過ぎてかなり苦労した


じゃあもし私が勇者じゃないなら

デルちゃんは私達を襲ってきたんだ……?

そこまで考えてると、ずっと黙ってたサンゴが口を開いた


「これでハッキリしたわね。あんたは勇者の剣を装備できないわ。その剣を元の場所に戻してきなさい」


「む、無理だよ…だってヒシンス城は墜落したもん」


「ついらく……?嘘でしょ!?」


「事の経緯を話しましょう。ワイス様もこの先一緒にいるのなら知る権利があります」


リアは私が魔王の娘である事、勇者の剣を抜いた後のことを

包み隠さず話した

アイボーはずっと目を輝かせっぱなしだ


「こりゃ面白い!相棒は魔王の娘でもあり勇者でもあるわけだ!そんなの聞いた事ないよ!」


「あの、隠してたこと、怒らない?」


「何言ってるんだ相棒!うちらはもう仲間なんだ!君の問題はうちの問題!全力で問題解決をサポートするぞ〜♪」


「アイボ〜ありがとぉ〜(´;ω;`)」


私がアイボーに抱きついて感謝していると

サンゴが私に近づいてくる


「…………事情はわかった。じゃあこうしましょう。あんたがこの剣を持つこと資格があるか、あたしが確かめてあげる」


「持つ資格…それって……?」


「あたしに、力で証明しなさい!」



【第12話 勇者の娘サンゴが勝負をしかけてきた!】

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