第14話

僕は、黒い感情に任せて、目の前の、恐怖に歪んだ、花音の顔をした美咲の首を締め上げていく。


どのくらい力を込めていただろうか?


呼吸の止まった美咲は、目線が定まらないまま、壊れた人形のように動かなくなった。


「え?……」


その瞬間、今まで感じたことがない高揚した気分と、目頭が、奥の方から熱くなる。


込み上げてきた、感じたことのない感情は、言葉にはならずに、丸い粒となり、横たわる美咲の頬に転がり落ちた。


自らの掌で頬に触れれば、間違いなくは、あたたかくて、僕の瞳から溢れていた。


僕は、袖で雑に涙を拭うと、夜空を見上げた。


「花音、ありがとう」


僕は、中身は違うが、愛する花音を自らの手で殺めてしまうことで、初めて『哀』を知ったことに気づく。


花音を殺す事で、『哀』を知った僕を、花音は、どう思うのだろう?どんな顔をするだろう?こんなこと、赦されやしないと僕の事を怒るのだろうか。


また、ニヤけそうになる口元を押さえながら、僕は、暗闇をゆっくりと歩き出した。

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感情 遊野煌 @yuunokou

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