第1章 世界くん降臨
第3話
♪キーンコーンカーンコーン
「うーん、もう朝なの……?」
ベッドから右手だけを出すと、ベッドサイドの学校の建物を模った目覚まし時計を止める。これは、学校教諭だった元彼の五年前の置き土産だ。
今更未練なんてない。何度もゴミ箱に捨てようとしたが、それでも何故だか捨てられないのは何故だろうか。
私は数年ぶりにその目覚まし時計を持ち上げるとしげしげと眺めた。それは中心が高く左右が少し低い左右対称の学校の建物のミニチュアそのものだ。
「うーんと、意外と見た目も音も悪くないのよね」
私は元彼の顔を思い出して、ふっと笑った。二つ年上だった元彼も意外と見た目も声も悪くなかった。友人の結婚式で出会って何となく付き合って何となく三年がすぎて何となく浮気をされて。別れ話をされた時の映像が脳内されそうになって慌てて私は首をふった。
「あー……清々しい朝に嫌なこと思い出しちゃったな。忘れるのよ、梅子!そして今日も仕事に邁進するのよ! ……よっこらしょっと」
私は勢いよくベッドから起き上がると、白いシャツを羽織り、黒のパンツスーツを見に纏う。
顔を洗って歯ブラシ立てに一本だけ挿さっている歯ブラシを持ち上げ歯を磨くと、『これさえあればモリモリ元気!ニコニコ笑顔のベジタブルジュース』とカラフルな色で印字された栄養ドリンクを、腰に手を当てて一気に飲み干した。
「ふぅ……えっと今日の予定はと……」
ダイニングテーブルの脇に置いてある鞄から手帳を拾い上げ本日の予定を確認しようとして時、手帳から真っ白な封筒がこぼれ落ちた。
宛名は書道家である母の整った文字で『
(あ、これも早く返事しなきゃな……)
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