第2話

その少し高めの甘い声も意地悪い顔でペロリと下唇を舐める色っぽい仕草も、着痩せするだけで適度に筋肉のついた身体も私の名前を呼びながらキスをする形の良い薄めの唇も全部がツボにはまる……はっきり言って、私は世界くんの虜だ。


「ねぇ、俺のコト好きですか?」


後ろからするりと伸ばされた長い腕に私の身体はあっという間に包まれて、もう世界くんワールドから抜け出せなくなる。


「好き……だと思うけど」


はっきり好きだと言えない自分がもどかしい。


でも一回りも年下の男に溺れてる自分を肯定するのはアラフォー女にとっては非常に勇気と度胸が必要な案件である。


「かわい。そーゆーとこツボなんすよね」


「か……わっ……ちょっと離してよっ、遅刻するじゃない!」


そのまま彼の唇が私の唇に重ねられてソファーの上に押し倒される。


「会議11時からでしょ。フレックスでいきましょ」


「ンンッ……」


「あ、この下着の色もツボっすね」


ツボっていうなら──目の前で意地悪く笑う子供みたいな笑顔も、スウェットから香る私と同じ柔軟剤の匂いもスウェットを脱げばすぐに目に留まる鎖骨のホクロもはっきり言ってツボだ。


「俺、梅子さんの虜なんで……」


ゆっくり揺すられながら、そんなことを耳元で囁かれたら、もうドツボだ。


「世界くんの意地悪……」


永遠に私は世界くんから抜けだけない。


世界くんのやりたい放題?違うな。

世界くんの言いなり?これもちょっと違う。

世界くんの想うツボ。あ、これだ。



「好きですよ」


──あぁ、今日も私は世界くんの想うツボだ。



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※フリーイラストです。ミカスケ様よりお借りしております。

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