第14話

──あれから10年。


「お、今日も香恋の恋カレーうまそ」


 仕事帰りの涼真は、私の一人暮らしの家にくるなりスーツのネクタイを緩めると、ダイニングテーブルに腰掛け、すぐにカレーを頬張る。


「もう、涼真に恋カレー、何回作ったかわかんないな」


 私はエプロンを外すと、いつものように涼真の真向かいに座りスプーンを持ち上げる。


「1000回目」


「え?涼真数えてたの?」


 驚いた私を眺めながら、涼真はあっと言う間にお皿を空っぽにして「ごちそうさまでした」とスプーンを置いた。そして、スラックスのポケットから小さな白い箱を取り出し、箱を開けると私に差し出した。


「え……?涼真? 」


「1000回目の恋カレーのおまじない知ってた?好きな人から1000回恋カレー作ってもらったら、その人が俺と結婚してくれるんだって」


 涼真の顔も、手元のダイヤモンドが輝く指輪もあっという間に涙でぼやけていく。


「また泣くし……返事は?」


 涼真は、立ち上がると指先で私の目尻からそっと涙を掬ってくれる。


「涼真が好きだよ……ずっと一緒にいて」


「うん、一生幸せにするから」


 涼真が私の額にコツンと額を当てると、私達はこれから永遠に続く二人の道を寄り添って歩ける幸せを噛み締めながら、長い長いキスをした。

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