第9話 シン・ヒーロー
帰国する少し前、クライネに話しかけられた。
クライネ「実は私、ユベントス王立魔法大学に転入するから、アートルムに教えて欲しいの」
僕「なるほど。いま云いたい所ですが、汽車がありますので手紙を下さい。場所は大学のドライクラング男子寮の254号室宛てにお願いします」
クライネ「分かったわ」
会話を終えて、威丈高に鷹の目の如く目を見張らせながら、汽車に踏み入った。
翌日
スーツの入ったトランクを受け取り、著た。
全部が真黒で、筋肉を大まかに模した鎧(全身にでは無く前腕や横腹には無く、肩は丸っこい。)があり、頭と手と足以外を隠す布の下に著る様の鴻毛の様に軽い、恐らく特殊な金属の鎖帷子があって、一部に固い何かが付いていて簡単に引き出せるかぎ爪があって、指の基礎骨あたりに固い何かを被せた革の手袋があり、復もや鴻毛の様に軽くて黒鉄の丸い兜がある。馬のしっぽの様な赤い兜飾りがある。
僕はアリス様に云われた、「サイズが合うかは明日聞きます」という事を思考の一隅に押し込んで、スーツを著て、剣を腰に差して夜の城下町へ繰り出した。
近頃の街は先日結成された自警団が警備をしている。僕はヒーローを騙る危険人物と云われている。子供なんかは僕の事をダークヒーロー的な存在として見ていて、誰が云ったのかは知らないが、「ナイトウォーカー」などと呼ばれている。僕の行っている事は、間違っているのだろうか。只々僕が独善なだけなのだろうか。わからない。
深呼吸をし、正義のヒーローとしての己を取り戻した。
二日後
夏の接近を感じさせようとする日盛りたる日の昼下がり、クライネからの手紙の返信を送ると、僕の部屋の前にアミアブルとサリエットが、偶然にも戸をノックしようとしていた。
サリエットはすぐに僕の存在に気が付き、「あ」と漏らした。その数分後にアミアブルも僕に気づいた。一先ず部屋へ上げて、話を聞いた。
アミアブル「まず先に、先日はありがとう。君が居なければ、私と妹は死んでいたと思う。とにかくありがとう、そしてお礼として或る剣を贈りに来たんだ」
僕はサリエットから、布に巻かれて鞘に収まっている剣を渡された。布には神代文字が描かれている。机に置き、布を解いた。
アミアブル「この剣は、「青雲の剣」という。大昔に古代エルフの英雄が、地獄の王と呼ばれる者を倒した時に使ったと伝わる物だ。伝承には、「錆びる事無き鏡の様なる刃にて、気高き魂を持ちうる者にだけ真なる道が現れる。」とある。あとは…何かあったはずだが、すまない忘れてしまった。」
見た目は一般的なロングソードだが、金色の鍔が鞘を抑える様に曲がって、持ち手に紺色の布が巻かれている。左手で鞘を握り、柄を握りしめた。
剣そのものが何人たりとも握らせぬ為に、折り曲げた鍔から純然たる青色の魔力が溢れ出す。鍔は正しき方向に戻り、僕は引き抜いた。喚呼たる鏡の如し。
サリエット「本当に抜けるなんて…」
アミアブルは「騎士団の訓練所で試そう」と旨を云われ、僕は追従した。
数人の騎士が剣技を磨いている。
サリエットが傀儡魔法を使い、「多分、その剣では月並みの試し切りの台だと、空気を斬る様なものだろうから、手ごたえを少しでも…」そう云った時に、第一級伝令を意味する、小さなペリースを身に著ける男が走って来、膝をついて頭を下げ両腕を額の上あたりに差しだして大声で語りだしたのだ。
男「申し上げます、申し上げます。南の遠方より地獄の双龍の片割れ、「ドグラ」がこちらへ向かってきております。殿下から直接のご命令でございます」
アミアブル「王国騎士団はどれくらい残って居る?」
男「訳五〇名であります」
アミアブル「副団長、凡ての騎士に緊急招集を掛けろ。アートルム、復私の恩人になってくれないか?」
僕「喜んでお受けします」
アミアブル「ありがとう。鎧は持っているか?」
数十分後
足軽の様な鎧を著て、青雲の剣を携えた。サリエットはスパルタ戦士の様な兜を被り、肩当が強調される鎧を著て、双剣を携えて和槍の様な物を握っている。
皆が馬に跨り、僕もカロムに跨った。
アミアブル「敵は神話の産物ドグラ! いま祖国を守れるのは我々だけだ! 全隊、進め!」
皆が雄たけびを上げたりしながら、ドグラの方へと果敢に進んだ。
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