第4話 仕事

 地下室に入れられた二日後に扉が開き、レーヴェは仕事に戻ることを赦された。


 とはいえ、大して喜べることでもない。

 食事は抜かれたまま、鶏小屋の掃除に向かわされた。鶏たちが毎朝卵を産んでくれるように環境を整えてやらねばならない。産まなければ掃除をした者が怒られる。


 鶏が終わると次は馬小屋が待っている。馬の面倒をみる専門の使用人が馬を小屋から出したあと、糞尿の掃除をし、きれいになったら新しい藁を敷き詰め、新鮮な水を井戸から汲んでくる。


 嫌な仕事は押しつけられるのが常であった。レーヴェにしてみれば力仕事をするより一人で黙々とできる方が好きだったから苦でもなかった。


 ただ空きっ腹だったことがつらくて、ふらふらした。腹一杯になるまで食べたことはないけれど、量が少しでも無いよりははるかにましだなと実感した。


 庭の掃除をすませ、日が傾いた頃屋敷へ戻った。今度は夕飯の準備が待っている。とはいっても料理をするのは別の使用人で、レーヴェがするのは皮むきや洗い物といったことだけだ。


 屋敷に住む者の人数は多くないので宴でもない限りその量は知れている。


 今の主は貴族間の付き合いが上手くないのか、代替わりしてから客人の数は減っていた。使用人や奴隷たちにしてみれば、仕事が楽になるのでありがたいことだった。


 仕事を終えた主が戻ってきて夕食を終えると使用人たちが台所に現れ、立ったまま食事をすませて仕事に戻っていく。使用人たちがすめば奴隷たちの順番、ではなく、主が寝入ってからの食事となる。


 固いパンを、具なしに近い薄いスープで柔らかくして食べ、そうしてようやく就寝の時間となった。


 夜になって、イレーネとようやく顔を合わせることができたが、話はできなかった。

 代わりにレーヴェが小さく手を振ると、イレーネも手を振り返した。


 全員に一部屋しか与えられていない奴隷部屋で、雑魚寝のような状態で横になる。


 お腹が落ち着いたお陰か、やはり寒い地下室よりはここの方が暖かいからか、レーヴェは横になると、すぐに眠りに落ちた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る