王国騎士団
村で手に入れた「エルダイトの欠片」を手にした龍は、村長に別れを告げ、次の目的地へと向かった。欠片を漆黒の騎士に組み込むことで、さらなる性能向上を図るためだ。
「この石、ただの魔力の塊じゃない。もっと深い秘密が隠されているはずだ。」
龍は欠片をじっと見つめながら、漆黒の騎士に命令を出す。
「エネルギー変換モジュールを起動し、この石の構造を解析しろ。」
『解析中……魔力特性の一部が科学的プロセスで増幅可能であることを確認。』
その報告に、龍の口元がわずかに歪む。
「やはりそうか。この世界の魔法も、理論さえ解明すれば効率的に利用できる。」
龍は森を抜けた先に見えた廃墟を発見し、そこを一時的な拠点にすることを決めた。廃墟の中には古代の魔法装置らしきものが点在しており、それを利用してエルダイトの欠片を実験にかけるつもりだった。
龍が廃墟で実験を進めている間、外から騎士の甲冑の音が響いた。鋭い視線を向けると、そこには全身鎧をまとった集団が立っていた。彼らの紋章には剣と魔法陣が描かれており、その中心に「王国騎士団」の印が刻まれている。
「篠田龍とやら。貴様がこの地の神聖な石を奪った男だな。」
リーダー格と思われる騎士が低い声で問いかける。
龍は一切動じることなく答えた。
「奪った? 違うな。適切に利用しているだけだ。」
その冷徹な態度に、騎士たちは明らかな敵意を見せた。
「王国に逆らう者を生かしておくわけにはいかない!」
そう叫ぶと、騎士たちは剣を抜き、龍に向かって突進してきた。
「漆黒の騎士、防御モードを最大化。敵の動きを解析しつつ反撃を開始しろ。」
『了解。防御モード起動中。』
廃墟の中に響く甲冑の音と鋭い剣の抜き声。それに応じるように、漆黒の騎士が静かに前へと一歩踏み出した。その動きには無駄がなく、威圧感を伴った機械的な音が響く。
「王国の名において、貴様を討つ!」
リーダー格の騎士が鋭く叫ぶと、王国騎士団が一斉に剣を構えて突進してきた。十人を超える精鋭たちが連携を取った攻撃は、まさに訓練の賜物と言えるもので、龍を狙い撃ちにしようとしていた。
「漆黒の騎士、防御モードを最大化。」
龍が命じると、騎士の腕部から展開された黒光りするシールドが戦場に影を落とした。次の瞬間、先陣を切った騎士の剣がシールドに叩きつけられる。
ガキィン!
金属が軋む音が響き渡る。だが、漆黒の騎士は一歩も引かない。それどころか、わずかにシールドを押し返し、敵の動きを止めた。
「なっ……!」
騎士の一人が驚きの声を漏らす。漆黒の騎士は人間では考えられないほどの力で、攻撃を正確に受け止めていた。
「全員で仕掛けろ!」
リーダーの号令で、複数の騎士が漆黒の騎士を取り囲み、同時に剣を振り下ろす。だが、そのすべてが読まれていた。
『敵の動きのパターンを解析中……防御対応完了。』
漆黒の騎士はシールドを瞬時に切り替え、全方向からの攻撃を正確に弾いた。続いて、龍が冷静な声で指示を出す。
「反撃開始。非致命的な箇所を狙え。データ収集が優先だ。」
『了解。』
漆黒の騎士が一瞬で防御から攻撃態勢に移行する。大きな盾を武器代わりに振り回し、一人の騎士の剣を弾き飛ばした。その次の瞬間には、機械的な動きで相手の脚を狙い、正確に一撃を加える。
「ぐっ……!」
膝をついた騎士を見ても、龍は一切表情を変えない。
「やはり動きが単調だな。効率的ではない。」
漆黒の騎士はそのまま次の標的に向かい、流れるような動きで反撃を続けた。巨大な腕で相手の剣を掴み、圧倒的な力で捻じ曲げる。
「これ以上は見過ごせない!」
リーダー格の騎士が前へ進み出ると、漆黒の騎士に向かって大剣を振り下ろした。その剣から放たれた一閃は、魔力によって強化され、通常の攻撃を遥かに凌ぐ威力を持っていた。
ドゴォン!
地面が大きくえぐられ、漆黒の騎士が衝撃を受けてわずかに後退する。しかし、その動きは即座に補正された。
『敵の武器に高エネルギー反応を検出。対応策を計算中。』
龍は画面を見つめながら、淡々と指示を出す。
「エネルギー干渉フィールドを展開しろ。魔力を無効化する。」
『了解。フィールドを展開します……完了。』
漆黒の騎士の体から青い光が広がり、リーダーの剣に込められた魔力が霧散していく。その様子にリーダーは驚愕する。
「なっ……何をした!?」
「ただ、お前の力を無効化しただけだ。」
龍の冷静な声が響く。
漆黒の騎士はリーダーの隙を突き、大きな盾で強烈な一撃を繰り出した。リーダーの体が宙を舞い、地面に叩きつけられる。
地面に倒れた騎士たちは戦意を喪失し、次々に武器を放り投げた。リーダーは膝をつき、無力さを噛みしめるように顔を歪めた。
「……化け物め……貴様、本当に人間なのか?」
龍はその問いに一切動じず、冷ややかな視線をリーダーに向けた。
「俺が人間かどうかなど、お前に関係はない。重要なのは、俺がこの世界をどう作り変えるかだ。」
その冷徹な言葉に、リーダーは返す言葉を失った。
戦闘が終わり、漆黒の騎士が再び龍の背後に立った。その動作は一切の乱れがなく、完璧に計算された動きだった。
『戦闘データの収集を完了。敵の武器と装備に関する情報を記録しました。』
「上出来だ。」
龍は端末を操作しながら、集めたデータを確認する。
「王国の騎士団がこの程度なら、俺の計画に支障はない。」
シールドを収納し、完全に沈黙した漆黒の騎士を一瞥してから、龍は冷たく周囲を見渡した。
戦闘が終わり、生き残ったリーダー格の騎士は膝をつき、剣を地面に突き立てた。
「……貴様、ただの冒険者ではないな。何者だ?」
龍は冷たい目で彼を見下ろし、静かに言った。
「俺は篠田龍。この世界を新しい形に作り変える者だ。」
その言葉に騎士は動揺した表情を見せたが、すぐに頭を下げた。
「分かった。だが、この地の石を勝手に利用することは許されない。王国の許可なく行動すれば、さらなる追っ手が来るだろう。」
「それでも構わない。」
龍は平然と答え、端末に新たなデータを記録した。
「必要ならば王国そのものを手中に収めるだけだ。」
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