異世界転生征服者〜黒スーツの青年は野望を燃やす
天汐香弓
プロローグ 天才の孤独
篠田龍は天才だった。
幼い頃から何事も正確に理解し、実行に移す能力を持っていた。龍の前に挑戦は存在しなかった。しかし、その才能は彼を孤立させた。
「お前には心がない。」
周囲の人間からそう言われるたび、龍は冷たく笑うだけだった。
心がないのではない。心が邪魔をするのだ。
感情に流される他人を見て、龍はただ効率的に物事を進めることが最善だと知っていただけだった。
ある日、篠田龍は新たな発明に取り組んでいた。それは、意識をネットワークで共有し、自己進化を可能とするAIロボット「漆黒の騎士」。このプロジェクトが完成すれば、人類の未来は大きく変わる。だが、その矢先、研究室で謎の光が彼を包み込んだ。
「……ここは?」
目を開けると、そこには牧歌的な風景が広がっていた。見知らぬ草原と青空、遠くにそびえる城。そして、傍らには漆黒の騎士が静かに佇んでいた。
龍は状況を冷静に分析した。
「異世界……か?」
SF小説や映画でしか見たことのない展開だが、目の前の光景はそれを否定しようがなかった。
だが、そんな非現実的な状況でも、龍は取り乱さなかった。むしろ、興味深い挑戦だと感じた。
まずは、漆黒の騎士を再起動させた。
「オペレーション開始。現在のシステムステータスを報告しろ。」
『起動完了。環境スキャン中……完了。エネルギー源の確保が必要です。』
「なるほど、この世界の資源を利用するしかないな。」
龍は手近な村に向かうことにした。歩きながら、この世界の特徴を観察した。
魔法のようなものが見られる一方で、技術的には中世レベル。異世界にありがちな剣と魔法の世界観だろうと推測した。
村に到着すると、そこは平和そのものだった。しかし、龍はその裏に潜む不安をすぐに察知した。
村人たちは警戒心をあらわにし、見知らぬ男に近づこうとはしない。
唯一近づいてきたのは、傷だらけの少年だった。
「おじさん、もしかして冒険者?」
少年の目には希望の光が宿っていた。龍は冷静に少年を見下ろしながら答えた。
「いや、ただの旅人だ。」
「でも、強そうだ!お願いだよ、助けてくれ!村を襲う魔物を退治してほしいんだ!」
龍は一瞬考えた。目の前の少年を助けることに価値があるかどうか。しかし、その思考はすぐに切り替わる。
魔物を退治することで、この世界の生態系や資源を調査する機会になると判断した。
「いいだろう。その代わり、条件がある。」
「条件?」
「魔物を退治した後、この村について詳しく教えてもらう。それと、この世界の通貨や情報が欲しい。」
少年は嬉しそうに頷き、龍を村長のもとに案内した。
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