第2話

―――

――――




「わかちゃん、おはよー」


「おはよう」


「あれ?どうした?目が死んでない?」


「うん、死んでる。再起不能って感じ」


「あはは、何それ!」




「笑いごとじゃないんだけどね」と、レジカウンターの中で珈琲豆の補充をしている菜緒ちゃんに苦笑を返す。



それから菜緒ちゃんと同じ制服の上着を羽織ってレジカウンターの中側に置いてある"従業員連絡日誌"に目を通した。



朝の7時過ぎ、店内は割と空いていてのんびりとした空気が漂っている。




「何?もしかして彼氏?」


「んー」


「また、例の"別れたい"ってやつ?」


「うん」


「どうせ、いつもの狂言でしょ?」


「そうだったら良いんだけどね、なんかいつもとちょっと違う気がするんだ」




不吉というか、何というか。

直接的な言葉が書かれて無かったのも、気になる。




「遠恋なんてするもんじゃないね」




菜緒ちゃんがそう呟いた時、1人のお客さんがレジカウンターにやってきた。




「いらっしゃいませ」


「珈琲ください」


「はい、かしこまりました」




確かに遠恋なんてするもんじゃない。

会いたいときに会えなくて、不安なときも待つしかない。




「お待たせしました、105円です」


「ありがとう」


「ありがとうございます!お気を付けて行ってらっしゃいませ!」




でもさ、遠恋をしようと思ってしたわけじゃないし。



仕方ないよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る