幼馴染の凌ちゃん

第1話

きっとこの恋は、駄目に決まっている。


――――わたしはスタートラインに立つことさえ拒んでいる。










「來々ちゃん!俺の靴下しらない?」


「やっべ、遅刻遅刻!來々ちゃんご飯早くちょーだい」


「來々ちゃーん、見て、ここ穴開いちゃった」


「來々ちゃん、來々ちゃん」




あ――――――――もう、うるさい。



お願いだからみんな一斉に名前を呼ぶのはやめて欲しい。見れば分かる通り忙しいの。1人1人に構ってる時間なんてないの!



だいたい何?靴下くらい自分で見つけなさいよ、炊飯器なら目の前にあるんだから自分でよそぎなさいよ、トレーナーの肘に穴が開いちゃった?そんなの昨日の夜にうちに言えっての……!



朝の食堂内は慌ただしい雰囲気と元気で野太い声に溢れかえっている。その中で、まるで小間使いのように動くわたしは心の中で悪態を付いた。



寒々しい外気の温度と室内にあるストーブの温度に挟まれた窓は、まるでわたしの心を表すかのようにデコボコの雫をいくつもくっ付けている。




「來々ちゃんーおかわりちょーだい」


「はーい、ちょっと待ってね」


「うわ、今の笑顔可愛いー!やっぱ來々ちゃんは俺らの癒しだよな」

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