第14話

* * *




疲れた。


本当に疲れた。この疲労感は何なんだろう。


というか、唇痛い。


あの人、どれだけドSなの?


縁が無ければ諦めるに決まっているじゃない?目に見えるものしか信じないなんて、どれだけ俺様なのよ、全く。


何が彼の逆鱗に触れて、どこで彼のサディズムのスイッチを入れちゃったのか分からないけど、いきなり襲われる側の身にもなって。




「帰ったら、まずビールだな」




昨日、あれだけお酒を飲んで泥酔したのに、まだビールを飲みたいと思うなんて自分でも呆れる。


けど、飲まなきゃやってられない。


そうだよ、いつもいつも気を遣って、神経すり減らして、働いているんだ。お酒に呑まれるのが何だっていうの。


時刻はもう明け方の4時半で、ハイヒールの音が出来るだけマンションの廊下に響かないよう、そうっと歩いていた私は、拳を握りしめた。




――――――――と。




「おかえりなさい!」


「……は?」




自宅のドアを開けて、中に入ると。


リビングから飛び出してきた男の子を見て、目を見開く。


嘘でしょ?


まだ、いたの。

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