第2話

これは、よくある話の1つで。


だけど、現実にはそうそう起こるものではなく。


テレビや小説の中で使われる、常套手段だと思っていた。


実に分かり易い"ハプニング"だ。




「ねぇ、」




嘘でしょ?とか、まさか、とか。


そんな可愛い子ぶって言うつもりはないけど、自分の頬っぺたを軽く抓って、これは現実なのかと確かめるくらいのパニックには陥っている。


ぐわりと揺さぶられるような頭痛がした。




「ねぇ、ちょっと」


「……ん」




気持ちよさそうな寝息を立てていた男は、んんっと軽く伸びをしながら目を開き、それからまるで甘えるように私の首筋に両腕を絡める。


その遠慮のない仕草に、一瞬思考が停止する。




「おはよう」


「……おはよう」


「よく寝れた?」


「お陰様で……って、それより、あなた誰」




朝、目が覚めると。


裸の男の人が、自分の隣で眠っていた。


こうなった経緯の記憶は、全く無い。あるとするならお酒を飲んだところまで。それも、どこでどれくらい飲んだかなんて覚えていない。


けど、この状況から察するあたり。


見知らぬ男にお持ち帰りされちゃったわけ……あ、違うか。


お持ち帰りしちゃったんだ。


ここ、私の家だし。




「えー、もう名前忘れちゃったの?昨日も教えたよ」




クスクスと。


おかしそうに笑ったその彼は、悪戯な瞳を私に向けた。

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