第17話

『なんかさ、頑張ってお洒落しているけど、ちょっとダサくない?なっちもそう言ってた!』


『うんうん、お嬢さんが無理してクラブに通ってるって感じ!ダサくて浮いているよね?』




……余計なお世話だよ。


別にお嬢様なんかじゃないけど、洋服がちょっとダサいのは認める。だってしょうがないじゃん、紙袋にあれ以上入らないんだから。




声の主から隠れるようにして足を止めていたけど、面倒くささがMAXになったわたしは、そのまま先へと進んだ。




と、分かりやすいくらいの反応を見せる彼女たち。




「あ~、あ、えっと!そう!今日って柾(マサキ)さん来ないのかな?」


「さ、最近ぜんぜん見ないよね!?」


「柾さんなら、明日来ると思うけど」


「「え!?」」




何気ないフリをして彼女たちの会話に混ざると、2人の声が見事に揃って返ってくる。



それが可笑しくて思わず吹き出すと、彼女たちもヘラヘラとした笑みを作った。




「えっと、レナちゃんだよね?柾さんと親しいの?」


「まぁーね」


「えええ、すごーい!本当に凄いんだけど!ねぇねぇライン交換しようよ!仲良くしようー」




分かりやすく掌を返した彼女たちに、正しい名前を教えてあげる気もなく、もちろん、




「絶対に嫌」




仲良くなる気もない。


スマホを持ったまま唖然とする彼女たちに笑顔を向けて手を振ったわたしは、化粧室の中へ入った。

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