ガラスの中の船
スクールバックと、色付きリップ
第3話
「れーいー」
教科書でパンパンになったスクールバックを抱えて昇降口まで行くと、お団子ヘアの女の子がわたしを見つけて大きく手を振る。
ぴょんぴょんとその場で飛び跳ねて両手をあげているものだから、お腹あたりの肌がチラチラと見え、近くにいた男子の視線を集めていた。
「美和(ミワ)……、待っててくれたの?」
思わずため息が零れそうになるのを無理やり飲み込みコホン、と咳をばらいをする。それから満面の笑みを作り美和の上着の裾を下へ引っぱった。
無防備というか、無自覚というか……、開き過ぎの胸元のボタンも留めてあげると、彼女は「あはは」と小さな笑みを零す。
「だって、いつも一緒に帰るじゃん。澪(レイ)」
「……そうだね、ありがとう」
「急に一人で帰るとか、寂しいしさ」
「そうだよね、ごめん」
「ううん、澪を待っていたいから待ってただけ」
美和は屈託のない笑顔のまま首を傾げ、すれ違った同級生に「バイバーイ」手を振る。
その同級生は美和に好意的な笑顔を返したけれど、隣に居るわたしを見て表情を曇らせた。
「美和……待っててくれてありがとう」
「当然じゃん~親友だし」
上履きからローファーに履き替えて、つま先をトントンと地面に軽く叩きつける。
"親友"という言葉は酷く曖昧で、わたしは嫌いだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます