第61話 終末世界

気付いたら半年以上も経っていた。

その間の記憶が全く無い。


世界中でモンスターが暴れ出して、そのモンスターに噛まれたり、体液を浴びたりすると、人間も生物もモンスターに変身してしまった。


それを止めようと、俺は沢山の人間を殺した。

時間が無いからと、他の選択肢があったかもしれないのに、犯人が見つかるまで、罪の無い人達を殺し続けた。


結局、犯人は見つけられなかった。

怪しい人は居た。

だけど、確証があった訳じゃない。


何も分からないまま突っ走って、意識を失った。

半年以上も記憶が無いし、俺が今、立っている場所は最後に意識があった場所より、500km以上も東の位置に移動していた。


数キロ先に海が見える。


俺から見える海には何もいない。


いや、実際は微生物と言われる生き物はいるが、魚やカニ、イカ、クジラ、イルカ、その他の俺の知っている海に居た生物は居なくなっていた。


索敵スキルを地球全体に延ばしても、俺の知っている地球に居た生物達と思われる大きさの個体は、本当に少ない。


地上には昆虫は沢山いるし、植物も綺麗な緑を見せている。


けど近くの森には、大きい生物は索敵で見つけられない。

昆虫ぐらいの大きさしか、索敵で見つけられない。


海に入って潜っても、小さなエビさえ見つけられないだろう。


地球全体の微生物、昆虫や植物等以外の生物は10万も居ないな。


人間は生き残ってるのか。


地上で数少ない生物、人間と思える大きさの生物が集合している、近くの場所へ飛んで行く。



アメリカの田舎町みたいな場所に着いた。


町の一角に、廃材や鉄板を集めて作ったバリケードで周りを囲んでいる中に、74の個体が集まっている。


飛んでバリケードの中に入っても良いが、事情を聞きたいので、穏便に話を聞く為に、入口みたいな所まで歩いて行く。


裸だった事に気付いて、通販スキルから適当に服と靴を出して着る。

なんか俺の身体、随分と痩せてしまっているな。

肋が見えるぐらい痩せた身体は、前の服より大分サイズが下がっている。

靴も前より小さめにしないとブカブカだ。


翻訳機だけ手に持って、バリケードまで歩いて近づく。


入口は頑丈そうな鉄の板を重ねた、無骨な作りの大きな門だった。

縦横どちらも3メートルはありそうだ。

ここから車とかも、入れるのかな。


入口の近くまで行くと、門より更に高い位置にある、見張り台みたいなのが横に備え付けられている。

その高台から見張りをしている人間が、俺に向けて、投石するスリング?から繰り出された、石の球を投げてきた。


野球の球ぐらいの石の球は、時速100キロ以上は出ている。


避けようかな?でも当たっても、骨が折れるぐらいかな。

反射スキルを解除して、筋力強化も無くして、石の球を左の太腿に当てる。


痛いな、でも骨は折れなかったみたいだ。

ただ、立っているのは、ちょっと無理なぐらい痛い。

地面に倒れ込んで痛みに耐える。


バリケードの中に居る人間達は、もう攻撃して来ないみたいだな。

反射スキルや筋力強化スキルを再開して、回復魔法で痛みだけ和らげる。


「バカヤロウ!まだ子供じゃねぇか」

「アイツらの仲間なら武器も持たずに、1人で近づかねーだろ!」


「おい!ガキ、大丈夫か?」


見た目が、ザ•田舎のアメリカ人といった人達が、6人こちらに向かって来る。

全員なにかしらの武器を持っていて、銃を持ってるのが3人いた。


鑑定すると全員スキルを、何も持っていない。


ここは弱った振りで、情報を手に入れたい。

俺が羽妖怪やモンスターを世界に召喚したとして、指名手配されている人間と思われても面倒だしな。

世界の人口は激減してるし、半年も経っているから、俺の存在を忘れていると思うが、どうだろう。


俺は泣きそうな顔をして、痛そうな声で

『左腿が痛いです』


「折れて無いな、ガキが1人で何で歩いてんだよ」


「レイダーの集落から逃げて来たのか?」


「いやガキの格好を見ろよ、綺麗な服に、腕も痣さえ無い」

「もしかして、安全なシェルターから出て来たんじゃねぇか?」



!?!?


なんだなんだ俺の声は。

なんか子供みたいな声をしてるぞ俺。


いやいや、それよりも俺、英語を喋ってる?英語を理解してる?


アメリカ人達は目をギラギラさせて

「ガキ、シェルターから出て来たなら、食料とか持ってるのか?」


『あの、俺ってガキに見えますか?』


「あん?12歳ぐらいのアジア人のガキだろ?」


1人の近くに来たアメリカ人が被っている、メタリックなヘルメットの反射した風景には、子供が映っていた。


禿げてない、中年親父じゃない、12歳の俺がいる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る