第15話 これまでのことこれからのこと
その後の話し。
美優ちゃんはベッドの上で警察からの事情聴取を受けた。包み隠そうとはせずありのままに喋ったらしい。
「少年院、か……」
などと遠い目をして言うものだから。
僕もかなり慌てたし、ある程度覚悟もしていたけれどそうはならなかった。
それは、会社の人達の証言だった。
これまでの太井部長の蛮行とも思える所業は全て白日の下にさらされ、ニュースは数日その話しで持ちきりになった。
女子高生が権力を振りかざす成人男性を鉄拳制裁する構図は、暴力的行為だと批判的意見もあったが、正義の女子高生なんていうふうにもネット上では言われていた。
そして、事実はもちろん学校にも伝わってしまう。
結果、“停学1ヶ月”というのが彼女に与えられた罰だった。
その間には、朝比奈家の両親に徹頭徹尾謝り倒したり、逆に謝られてしまったり、警察への協力や心ないマスコミを突き返したり、様々あったものの全てではないがようやく少し落ち着きを取り戻しつつあった。
「引っ越しした方がいいんじゃない?」
晩御飯のカレーを食べながら奏は真剣な顔で言った。
「だよね。僕もそれは考えてる」
ネットの世界は恐い。どこで情報が漏れるかもわかった物ではないし、自宅凸とかされたらそれこそメンタルがもたないだろう。
僕も美優ちゃんも住む場所は変えた方が良いというのが結論だった。
「んーでも、どこにしよっか。二人ってなるとある程度の広さは欲しいし、23区は家賃も高いしオートロック付きでそこそこの物件ってなると大変だよね」
……気のせいだろうか。今の文脈だと僕と美優ちゃんが一緒に暮らすって聞こえるけど。
「大丈夫、気のせいじゃないぞ」
と、奏。
「お兄ちゃんの心読まないで!ズルい!」
ぷくっと頬を膨らます美優ちゃん。
ズルいってなんだ。
「いや、あのさ美優ちゃん。それは流石に難しいというかダメというかさ。ほら、年頃の男女が一つ同じ屋根の下とかは流石に、ね?」
「むぅー……」
そう言って頬の膨らみがまた大きくなる。
そして、少し考える素振りの後に、思いついた!とばかりにスマホを握りしめて外に駆け出して行った。
「美優ちゃん、どうしたのかな?」
「私は大体わかるけどね〜。ってかそれしか方法ないし、一番確実だとは思う」
奏は大盛りカレー二杯目を完食しつつ、三杯目をよそいにいく。
しかし、どんだけ食うんだお前は。
パクパクと食を進める奏を見ながらぼーっとしていると玄関からパタパタと足音を立てながら美優ちゃんが戻ってきた。
「おっけーでたよ!やったねお兄ちゃん!同棲許可いただきました!」
「はい……?ドユコト……?」
どうやら電話していたのは朝比奈家のご両親。
事情を鑑みて特別にとのことらしい。
「そんなあっさり……!?それにごめんだけど、正直二人で住めるようなところの家賃はちょっと僕の貯金では……」
「それも大丈夫!お父さんが買ってくれるって!」
「いやいやいや!流石に申し訳ないよ」
「一応、お兄ちゃんには月五万円を家賃として払ってもらって、生活費は折半。
あと、わたしが勉強サボらないように見張って、お兄ちゃんは貯金が尽きる前には就職するなりなんなりしてお金を稼げるようにすること!これが条件だって!」
実際のところ僕は1年は働かなくても良いくらいに貯金はある。使うところもなかったし月五万円で都内に住めるのは好条件すぎる。
それに、ちゃんと家賃を払うことで、自分に発破もかけられるだろう。
「甘えちゃえばいいんじゃない?うち小金持ちだし、ちょっと良いマンション買うくらいは大丈夫だと思うよ」
「で、でもなー……」
奏はそう言うが、僕にあまりに好条件すぎるし、ここまでお世話になって更にお世話になるなんて……
「お兄ちゃん。わたしは不安です」
僕の前に真剣な顔をした美優ちゃんが座る。
「軽くあの日のことはトラウマです」
「うっ……」
それを言われると弱い。
「お兄ちゃんがいなくなっちゃうんじゃないかって……!」
「はがっ……」
上目遣いで見ないでっ!
「今でも思い出すと体の震えがっ」
「わかった!わかりました!わかりました!そうだよね!」
そんなこんなで僕と美優ちゃんの同棲改め二人暮らしが始まるのであった。
美優ちゃんは嬉しそうにニコニコしている。
よく見ないでもこんな美少女と同じ屋根の下とか、色々大丈夫なのかっ!?
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この作品は一旦ここまでで完結とさせていただきます。
理由は単純に他の作品書きたくなったからです笑
この作品自体もまだまだ書きたいことはあるので、様々な投稿をしていく中でもしかしたら再開することもあると思います。
その際は、また見ていただけたら嬉しく思います。
僕だけの君、君だけの僕 アライグマ @tuguhi1204
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます