第1章「出会いと誤解」⓷
雨が止まない中、沙音は自分の傘をさしてカフェを出る。しかし、少し歩いたところで、ふと気づいた。「あれ、私の傘、なんか違う…?」
慌てて振り返ると、近くにいた誰かが自分の傘を持っている。困り顔で周囲を見渡すと、拓磨が歩いてきた。拓磨もまた、自分の傘が見当たらない様子で驚いていた。
「あ、これって…!」拓磨と沙音は同時に声を上げ、互いに笑った。
「まさか、傘が交換されたんだね。」拓磨が言うと、沙音も苦笑いを浮かべた。
「本当に、申し訳ないです。」沙音は少し恥ずかしそうに言った。
拓磨はそんな沙音を見て、すかさず微笑む。「全然気にしないで。たまにはこんなこともあるよね。」
その言葉に、沙音は少し安心した。二人はお互いに傘を交換し合い、少し照れくさそうに別れの言葉を交わす。
「それじゃ、またね。」拓磨は少し手を振りながら歩き出す。
沙音はその背中を見送りながら、心の中で少しだけ温かさを感じていた。
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