第2章: お互いの価値観と考え方

数日後、再びそのカフェで偶然顔を合わせることになった。今回は遥奈が先に席を取っており、目の前にはノートパソコンが開かれている。陸⽃は少し戸惑いながらも、ふと空いている席を見つけて座ることにした。彼もまた、今朝の面談を終えた後、少し考えを整理したかった。

「またお会いしましたね。」遥奈が、やや照れながらも軽い笑顔を浮かべて言った。

「そうですね。」陸⽃は静かに答えた。今回は、最初よりも少しリラックスしていた。

しばらくお互いに黙って過ごすが、やがて自然と会話が始まる。彼女が最初に切り出したのは、自分の仕事の話だった。

「私はキャリア・コンサルタントとして働いていて、クライアントの将来に関するアドバイスをしています。でも、最近、少し迷っているんです。クライアントが自分の価値を見つけられないと、どうしても難しくなってしまって。」

「価値か。」陸⽃が反応した。彼はしばらく黙って考えた後、自分の仕事に関して話し始めた。「僕は幼稚園の教員です。子どもたちには、どんなに小さなことでも良いから、まずは自分に自信を持ってほしいと思っています。でも、最近そのアプローチに疑問を感じるようになって。」

遥奈は少し驚きながらも、彼の言葉を聞き続けた。「疑問を感じるって、どういうことですか?」

「理論的に教えるのが正しいと考えてきたけれど、実際にはもっと柔軟なアプローチが必要だと感じているんです。」彼は目を閉じて少し考えながら言った。「教育だけではなく、すべてにおいて、自分が正しいと思うことだけでは足りないことがあるのかもしれません。」

遥奈はその言葉に強く共感し、さらに深く話を掘り下げようとしたが、彼の姿勢が無理に自分の意見を押し付けないことに少し驚き、同時に心地よさを感じた。

「それ、すごく素敵だと思います。」遥奈は、柔らかな笑顔を浮かべて言った。

二人はその後も話を続け、互いに価値観を少しずつ理解し合うようになった。それぞれの仕事に対する真摯な思いが、次第に二人の関係を静かに築き上げていった。

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