二人の歩幅~陸⽃と遥奈~

mynameis愛

第1章: 出会いと第一印象

 寒い冬の朝、都市の喧騒を背景に静かなカフェの一角で、二人は初めて顔を合わせた。陸⽃は、仕事前のひとときを過ごすためにそのカフェを選んだ。毎日のように訪れる場所だが、今日は何かが違うような気がした。暖かいコーヒーを手に、彼は窓の外をぼんやりと見つめていた。

 遥奈はキャリア・コンサルタントとして、今日もまたクライアントとの面談を終えた後、ひと息つくためにそのカフェに足を運んだ。普段ならば、もっと静かな場所を選ぶことが多かったが、今日はあえて人の多い場所で過ごすことにした。どこかで新しいインスピレーションを得たかったのだ。

 席が埋まりかけていた店内で、遥奈は空いている席を見つけ、隣に座ることにした。そのとき、目の前に座る男性にふと目が止まる。彼は静かに本を開き、時折ペンを走らせながらメモを取っている。その姿に、遥奈は少し興味を抱いた。

 陸⽃もまた、隣に座った女性に気づく。彼女は何となく落ち着いていて、どこか知的な印象を与える。彼の理論的な思考が一瞬、静かな興味を抱かせた。だが、すぐに自分の世界に戻ろうとした。無名のままで満足している彼にとって、他人との会話は面倒なものであり、意識的に距離を置くようにしていた。

「すみません、この席、大丈夫ですか?」と、遥奈が話しかけてきた。

 少し驚いたが、彼は淡々と答える。「はい、どうぞ。」

 その短い会話の後、二人は静かな空間でそれぞれの思考にふけることとなった。遥奈は彼の姿勢に少し感銘を受けながらも、自分の目の前のパソコンに向かい、次の仕事に取り掛かる。

 陸⽃もまた、自分の思索を続けた。彼女に特に強く興味を持ったわけではないが、何かしらの違和感を感じた。それは自分の中で理論的に説明しきれない、何とも言えない感覚だった。

 時間が過ぎるにつれて、二人の間に自然な静けさが漂い始め、共に過ごす空間はどこか心地よく感じられるようになった。そのまま、互いに言葉を交わすことなく、少しずつ時間が経過していった。

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